第7章 灯火
「うん、そうなの。
まぁ悟のメンタル面を考慮する人なんて居ないと思うけど、それでも桜井さんを差し置いてあの子が同行するなんて納得が出来ないのよね。
なんであの子なんだろう」
「……珍しいですね、嫉妬ですか?」
「ち、ちが!
って違くはないんだけど、そうじゃなくて。
単純に変だなって思ってさ」
5階建てのビルを1階から順に見回りをしていく。
上に行けば行く程に強まっていく呪力。
上に居るのは確定かなぁ。
「ところで真白さんの言うあの子とは?」
「あー、そっか。ごめん気が付かなくて。
悟に同行してる補助監督の女の子。
名前は知らないんだけどちょっと明るめの茶髪の子で……」
「あぁ、彼女ですか」
「七海会ったことあるの?」
そう尋ねると少し頬を引き攣らせて笑った。
「以前お会いした時に、少し常識が欠けていたので注意したら泣かれてしまいました。
その後は1度も会っていません」
確かに七海との相性は良くないだろう。
真面目で仕事もキッチリこなすタイプの七海は、伊地知くんのようにしっかりしていて責任感のある人の方が合うだろう。
まぁ伊地知くんはいつも悟に振り回されてばかりなんだけど。
多分悟の我儘に付き合えるのも伊地知くんぐらいだ。可哀想だけど。
それに普段は七海1人で動いているしもう補助監督も要らなそう。
「……真白さん、私の勘違いだったら申し訳ないのですが」
「うん?なに?」
「その補助監督の少女、恐らく上層部の誰かの娘さんじゃないでしょうか」
「え?まじ?」
「ハッキリとは聞いていないので確証はありませんが、以前確かパパがどうとか言っていた気が……」
それならば上層部のあの無理矢理な変更も頷けるかもしれない。
上層部であれば私や悟のスケジュールを決めることぐらい訳ない。
だとするとやりにくいなぁ。
彼女がまだ悟のことを狙っている以上、多分今後も私のスケジュールを弄って来るだろうし。
「っと、お喋りは一旦中断した方が良さそうね」
「そのようですね」
目的の5階。
扉の奥からは禍々しい呪力が漂っている。
一体ここで何が行われていたのか、そして今何が居るのか。