第7章 灯火
「大体男に可愛いなんて、なんの褒め言葉にもなりませんよ」
「えー、そう?」
「建人ちゃんは昔から可愛いよ。今の方が断然色っぽいけど」
「なんですか、それ。
というか男に可愛いって言われても……」
「悟ちゃんもイケメンだったけど真白ちゃんの彼氏だからね〜?
流石に人のオトコは褒めない!てか建人ちゃんが好み」
「桜井さんいつも七海のこと可愛いって言ってるんだよ?
腰細いとか」
「腰……別に細くはないですよ」
「やだ、細いわよ!他がガッチリしてるから特に。
でもそこがエロくて良いんだけどね〜」
「男に言われても嬉しくありません」
「あらやだ、酷い!それは内緒でしょ!もう!」
そう。
桜井さんは男の人なのだ。
外見や声は物凄く綺麗な女性なのに、身体は男の人。
因みに言うと恋愛対象は男の人だ。
綺麗な栗色の髪は緩く巻かれていて、スタイルだって良い。
私も学生のの頃に初めて会った時は女性だと勘違いしてしまった。
「あ、そろそろ着くわよ〜」
目的の場所は車で入ることが出来ない為、1番近くのコインパーキングに停めて2人で向かう。
今回は廃ビルに出る呪霊の調査だ。
本来ならば私達が出る幕ではないが、謎の多い現場なので念の為ということだ。
廃ビルをどんどん進んで行きながら隣に居る七海に声を掛けた。
「ねぇ、七海。
七海って上層部に仲良い人居る?顔見知りとか」
「居ませんけど、どうしたんですか?」
「んー、なんか最近変なのよね。
私の任務、それも長期の割に重要度の低いものが増えたの。
しかもここ数ヶ月で」
「そういえば五条さんも長期の出張増えましたね」
悟は面倒そうな案件は即パスする癖がある。
どうしてもという時は物凄く文句を垂れながら行ってくれるが、基本は私に回って来ることが多い。
それなのに今回は悟の長期出張も多く、それを知らされていないこともあった。
流石に変だ。
伊地知くんが伝え忘れるなんてことは無いだろうし、そもそも補助監督が新人の子になるなんてのも不思議で仕方ない。
「急遽上からの指示で同行の補助監督が変わったりとか」
「……変ですね。
普通長期任務であれば、メンタル面も考慮して付き合いの長い補助監督が同行することが多いのに」