第12章 オマケ
事件のあった夜、最終の事実確認を行おうと五条さんの部屋を訪ねた。
辻咲さんは寝てしまったようだったので、扉越しに五条さんに相違点がないか確認を取っている。
「っ、うそ……あぁっ、やぁっ」
扉越しでもハッキリと聞こえた女性の喘ぎ声。
これは疑うことなく、辻咲さんの声だろう。
五条さんの嘘つき、全然寝てないじゃないですか!
しかも最中だったなんて!なんてタイミング!
「しっ、失礼しました!すぐ帰ります!明日また確認しに来ます!申し訳ございません!」
急いで謝罪の言葉を述べてその場から走り去る。
これ以上あの場に居てはいけないと、私の第六感が大きな音で警鐘を鳴らしている。
あのまま居たら五条さんに殺されかねない。
良くて任務放棄とか。
それだけは絶対に避けたい。
「あれ、伊地知くん?どうしました?」
「ひっ、な、七海さん。お疲れ様です」
「はい、お疲れ様です。そんなに慌ててどうしたんですか?」
「なんでもありません!ごめんなさい!」
ジャケットを片手に持っていた七海さんとたまたま廊下で鉢合わせた。
高専の寮に住んでいない七海さんとここで会うのは珍しいことだ。
そしてすぐに謝ってしまうのは私の悪い癖。
「今回の件聞きました。
真白さんの様子を見に行きたいのですが、今部屋に居らっしゃいますか?」
「ひっ、あの、居るには居ますが今は寝てらっしゃるとのことなので、その……」
ピンポイントで来た、その話題!
今1番出て欲しくない名前!
ごめんなさい、辻咲さん。
あなたに罪はありませんが、暫く顔を見ると思い出してしまいそうです。
「そうですか、ではまた日を改めます」
そう言って七海さんは来た道を戻って行く。
なんとか二次被害を抑えることには成功した……と小さく胸を撫で下ろした。
*****
翌朝、任務の為に部屋に迎えに行くと五条さんは案の定不貞腐れたような表情をしていた。
辻咲さんの姿は見えなかったが、声は聞こえたので起きているのだろう。
早く仕事に行くようにと急かしてくれていた。
ありがとうございます、辻咲さん。
いつもあなたが急かしてくれるお陰で最近五条さんの遅刻癖が許容範囲になって来ました。