第7章 灯火
「真白このシャンプー好きだよね。いつの間にか僕の部屋に持ち込んで」
「それは悟が私物自由に持ち込んで良いって言ってくれたからでしょ。
このシャンプーが1番髪が絡まらなくて好きなの」
「僕も好きだよ、このシャンプー。
真白の匂いだからね。甘ったるい蜂蜜の匂い」
「甘ったるいって……」
私はほとんど悟の部屋で生活している為、私物を自由に持ち込んでも良いって前に悟が言ってくれた。
呪術高専は1部の教師も寮生活をしている。
天元様の結界があるとはいえ、生徒の安全をより確実に護る為である。
ちなみに悟と私は寮生活。
悟は寮の外にも部屋があるって噂だけど。
私の部屋はほとんど使っていない。
最近は悟の部屋で報告書を作ることが増えて来たから、今はたまに掃除しに入るぐらいだ。
なんだか勿体ない気がする。
そう思って学長に話してみたりもしたが、私が仕事で使った資料や集めた呪具も多く部屋にある為、それらを保管するのに使ってくれと言われてしまった。
「悟、ありがと。悟のも洗おうか?」
「いや、良いよ。真白に任せると目に泡が入りそう」
「失礼な!そんなことないよ!」
「怖いからヤダ〜」
自分の髪を洗う悟を見ながら、私は湯船に浸かった。
少し低めのお湯は悟の好みの温度。
あまり高い温度だとすぐに逆上せてしまうから。
……やっぱり、バランス良く綺麗に筋肉ついてるなぁ。
無駄なく鍛えられた身体って感じがする。
「ねぇ、真白」
チャプン……と湯船に脚を入れる悟。
ギリギリまで張られた湯は悟が沈むのと同時に溢れた。
190を超える長身の悟が入ってもまだ余裕のある浴槽。
私と2人で入れば少し窮屈なぐらいだ。
かなり広いだろう。
「こっちおいで」
腕を引かれて、悟の脚の間に収まる。
後ろから腕を回されて密着している背中に感じる肌は、いつもより少し高い。
「真白可愛い。指輪似合ってる」
「悟のセンスが良いからだよ、なんかいつも傍に居るみたいで助けられるの」
お湯の中でも存在を主張するターコイズブルーの宝石。
悟が婚約指輪にとプレゼントしてくれたもの。
自分で探しても分かったことだけど、この石はかなり希少で滅多に市場に出回らない。
その上ここまでの大きさの物はきっと手に入れるのに苦労したことだろう。