第6章 トナリ
「悟、狙われてるの?」
「恐らくね」
「……そういえば五条先生の出張、急遽あの人が代わりに同行してたらしいですよ。
なんか急に決まったとかで、2週間桜井さんが俺らの同行してくれてました」
恵の言葉に、心臓が嫌な音を立てて騒ぎ出す。
なんで今回は桜井さんが同行だって言ってたじゃん。
桜井さんなら万が一にも間違いは起きないし安心してたのに、2週間もあの子と一緒だったってこと?
「なんで?なんであの子なの?
悟の同行いつも伊地知くんだったじゃん、なんで?」
あんなに若くて可愛い子と2週間も一緒だったなんて不安しかない。
どこまで一緒に居たの?
任務中はずっと彼女の運転だっただろうし、そもそもどのぐらいの任務をこなしていたのだろうか。
何時間彼女と2人きりだったのだろうか。
余計なことばかりが頭に浮かぶ。
「それは俺に言われても……。
桜井さん曰く急に上が決めたことらしいです」
「上層部かぁ……苦手なのよね、なんか空気が」
「五条先生ならきっと大丈夫だよ!
俺らと居る時もすっげー辻咲先生のこと褒めてっし!」
「……ほんと?」
「「「マジ」」」
珍しく3人の声が重なった。
その上野薔薇ちゃんや恵は、やや苦い顔をしている。
これは相当悟に滅入ってる顔だなぁ。
一体どれだけ言ってるのやら。
気になるような、でも聞きたくないような。
「五条先生の惚気っぷり半端ないよ!
だから安心しなよ!辻咲先生!」
「ふふ、ありがと、虎杖くん」
「おう!
あ、てか今日の任務久々に3人で行くんだ!
特訓の成果出してくるから期待しててよ」
「ん、気を付けてね」
3人を任務に送り出すと、教室はシンと静まり返る。
「……なんか寂しいなぁ」
ポツリと小さく漏れた声は静かな室内ではよく響く。
返って来ることの無い返事。
この空白が私を更に虚しい気持ちにさせる。
「仕事しよ」
1人で居ても嫌なことばかり考えてしまう。
余計なことを考えないように今は仕事に集中しよう。
そう思ってスマホの、1番上の連絡先を押した。