第6章 トナリ
「その顔たまんない……」
「悟、授業始まっちゃう」
「ちょっとぐらい遅れたって大丈夫。
もう少し食べたい」
結局少しなんかじゃ終わらなくて、悟のシャワーもあり授業には30分も遅れてしまった。
当然生徒達からのブーイングがあった。悟に対して。
皆原因は悟にあると決めつけていた。
まぁ、実際にそうなんだけど。
「メンゴメンゴ、真白が可愛くて止まんなかった!」
生徒達の前で言った言葉。
皆初めはポカンとしてたけど、少しすると意味を理解したのか顔を赤くしていた。
その時の私のいたたまれなさと言ったら!
「悟サン!えへへ、待てなくて会いに来ちゃったぁ!」
ガラッと勢い良く教室のドアが開き、教室には似つかわしくない声が響く。
高めで甘ったるいような声音。
この教室の誰のものでもない。
「えぇー、まだ任務はあとでしょー?やだよ、僕行かない!」
「そぉだったんですけどぉー、急ぎになったって連絡がぁ〜」
「やだね、僕忙しいもん」
以前恵の現場に同行していた補助監督だ。
なんで悟と一緒に?
悟の同伴は伊地知くんか桜井さんがほとんどなのに。
なんで?あと、距離近くない?近いよね?
無下限の範囲ギリギリまで近くに居る。
そんなに近付く必要ないでしょ、離れてよ。
醜い黒い感情が私の頭の中をグルグルと駆け巡る。
「ちょっと、真白センセ?
良いの?あんなんでも一応彼氏でしょ、距離近くない?」
「や、やっぱり近いよね!?」
コソッと耳打ちで声を掛けてくれた野薔薇ちゃん。
野薔薇ちゃんが言うぐらいだから相当距離感が近いんだろう。
良かった、私がおかしい訳じゃなかった。
「悟サン!早く行かないとあたしが怒られちゃうんですぅー。
ほらほら!ね?早く!」
「僕まだ授業中なんだけど」
「いーの!ほら行こ!」
残り数分とはいえまだ授業中。
それなのに任務だと言って悟を連れ出したのにはそれ相応の理由があるのか。
そんなに重要度、緊急性の高い呪霊が出たのか。
「ねぇ、真白センセ。
余計なお世話かもなんだけど、あんたの彼氏狙われてない?」
「へ?」
「あたしらや虎杖に対する態度とは明らかに違うし、あんな猫被ってなかった!
伏黒の時はこんなんだったけど今回は特にあからさま過ぎ。
気をつけた方が良いよ」