第5章 会えない時間
「ん……」
朝目が覚めると身体がスッキリと軽かった。
ちゃんと睡眠を取れればこんなに身体が楽なんだ。
通話は随分と前に切れていていた。
「今日は1日高専で授業か」
仕事着に着替えて、少し長くなって来た髪を1つに纏める。
私は教員経験は多くない。
悟に誘われて去年から副担任という形で教師になったけど、去年は任務に追われてほとんど経験がない。
あとから分かったことだけど実は悟の任務も知らず知らずの内に押し付けられていた。
「なんだかんだ初めてかも……」
1人で生徒達の授業をするのが。
緊張で心臓がバクバク煩い。
困っても誰も助けてくれない。
教室までの道のりがこんなにも短く感じたのは生まれて初めてだ。
「おはよー、辻咲先生!今日は先生が授業してくれるの?」
「あっ、虎杖くん、おはよう」
「どったの?顔赤いよ、熱?」
「あ、ううん、1人で授業するの初めてだから緊張しちゃって」
「そーなの?でも先生なら大丈夫だって!安心して!」
「ありがと、虎杖くん」
「おう!」
虎杖くんの言葉に少し心が軽くなった。
誰にだって失敗はあるんだし、恐れずにやろう。
失敗しちゃった時は口止めして悟には伝わらないようにしなくちゃ。
絶対からかわれる。
「おはよう」
「あ、おはよー、辻咲センセ。ね、真白センセって名前で呼んでも良い?」
「うん、もちろん。ありがと、野薔薇ちゃん?」
「くっ……カワイイ」
緊張いっぱいで臨んだ初授業。
生徒達のフォローのお陰でなんとか形になっていたと思う。
人に教えるのって難しい。
「……あの、真白さん」
「ん?どうしたの?恵」
「放課後予定無かったらなんですけど、体術の稽古つけてくれませんか?」
「体術?あ、そっか悟が出張だから」
最近恵に稽古をつけている、と悟から聞いたことがある。
プライドの高い恵が珍しいなぁなんて思ったものだ。
まぁ悟は体術も強いから教わるには持って来いなんだけどね。
「……うーん、それなら午後の授業使って皆で模擬実戦しようよ」
「「「模擬実戦?」」」
3人の声が綺麗に重なる。
昼食と軽い休憩を挟めば次の時間は午後の1時間だけ。
特にやることも決めていなかったし、皆が良ければ丁度良いだろう。