第3章 契り
「真白さんもお酒とか飲むんですね」
「ん、まぁね。
普段はあんまり飲まないけど、ストレス溜め込みたくないから適度に飲んで忘れてる」
コンビニの鮭おにぎりを頬張る。
隣からプシュッと炭酸の抜ける音がして、恵がお酒をコップに注いでくれていた。
「飲んじゃダメよ?」
「飲みませんよ。
真白さんも飲み過ぎたらダメですよ」
「ふふ、分かってる。もう子供じゃないんだから加減ぐらい出来るわよ」
「なら良いですけど」
*****
……加減して飲めるんじゃなかったのか、この人は!
もうベロベロじゃねぇか。
「だから!起きたら知らない男にキスされてんのよ?信じられる?
胸触られるし、セクハラみたいな発言されるし。
恋人同士って言っても今の私にはその記憶がないのに!
聞いてる!?恵!」
「……それは五条先生が悪いですね」
「でしょ!?」
顔を真っ赤に染めて、俺に詰め寄る。
酒に酔っているのか目は潤んでいて、距離感もなんかおかしい。
ピッチリと隙間がないぐらいに詰められた距離。
蜂蜜みたいな、甘い匂いに目眩がする。
この人は天然の毒みたいだ。
「恵は付き合ってもない子にキスなんてしちゃダメだよ?
女の子は傷つくんだから」
「しませんよ。あと近いです」
「近くない!
ていうかね、胸が小さくなったとか普通思ってたとしても本人には言わなくない!?」
「ぶっ……げほ、ごほ……」
ちょうどお茶を飲み込もうとした瞬間、真白さんの発言に思わずお茶を吹き出してしまった。
チッ、変なとこ入ったせいで咳が止まらねぇ。
「恵大丈夫?」
咳き込む俺の背中を擦り、落ち着かせようとしてくれる。
その手はいつも柔らかくて、温かい。
……限界だ。
これ以上真白さんと一緒に居たら頭がおかしくなっちまう。
*****
コンコンと小さくノック音が響くと同時に扉が開いた。
いつもはノックなしに入って来る癖に。
「どーもー、真白回収しに来たよん」
「げ……」
「げ、ってそりゃないでしょー。
もうこんなにベロベロに酔っ払っちゃって、明日二日酔いになっても知らないよ〜?」
「なんでここに居るの」
「んー?真白の彼氏だから」