第3章 契り
「すみません、俺が呼びました」
「恵が!?なんで!?」
「はいはーい、恵には恵の事情があるんだよ。
という訳で帰るよ」
抵抗する真白さんを難なく抱え、あっという間に俺の部屋を出て行く。
せめて部屋片付けてから帰ってくれ……。
空き缶やおにぎりのゴミがそのままだ。
俺の部屋から酒のゴミが出てたら問題だろ。
*****
「ちょ、やだ、下ろして」
「だーめ」
五条の部屋に連れて来られ、そのままベッドに放り投げられる。
バフッと深く沈むベッドは柔らかく、痛みは感じない。
起き上がろうとする私を組み敷き、お腹に馬乗りになり、腕を拘束されてしまった。
早過ぎて対応出来なかった。
酔ってたとはいえ、不覚。
「やだ、触らないで」
「……恵や七海は良くて僕はダメなんだ」
「当たり前でしょ!ていうか2人はこんなことしない」
「されてたらシメるだけじゃ済まないよ?
僕の何が気に入らないの?」
目隠しを外し、現れた瞳。
昼間に見たビー玉のような綺麗な水色は、同じ色の筈なのに少し怖く感じた。
目にランランと熱が籠っていて、今にも焦がされそう。
「だって、あんたのことよく知らない。なんか胡散臭いし」
「なら教えてやるよ。その身体に」
「え?んっ!」
重ねられた唇は荒く、呼吸する時間を与えてくれない。
何度も何度も唇を離しては重ね、離しては重ね。
酸欠で苦しくて涙が滲むのに、反対に敏感になっていく身体。
ビクビクと勝手に身体が跳ねる。
苦しい。息が吸えない。
掴まれている腕はビクともしなくて、脚をバタつかせるのが精一杯の抵抗。
なんて非力なのか。
「ん、もう限界?」
五条の言葉に全力で首を縦に振る。
その弾みで溜まっていた涙が落ちる。
決して泣いた訳じゃない、決して。
頭がフワフワして上手く働かないのはお酒のせい。
きっとそう。
それしか有り得ない。
「ふっ……かーわい、そんなに気持ち良かった?
目ェトロンとしてるよ」
「っ、してな……」
「はいはい、じゃあそういうことにしておいてあげる」
ゴリ……と腰骨辺りに当たる硬いナニカ。
それが何か分からない程私はウブじゃない。
「ちょっと、シないよ?」
「なんで?」
「なんでって、五条とは付き合ってないし」