第3章 契り
「……納得は出来ないけど理解したわ。
とりあえず他の被害者の呪いを解くのが優先よね?」
「はい。辻咲さんも大変な時に他を優先させて申し訳ないですが……」
「良いの良いの。
誤解がないように先に言っておくけど、解除方法は伝えられるけど解除出来るかどうかは本人達次第よ」
「承知してます」
とはいえ、私がこの人の記憶を失っているのだとしたら、この人には迂闊に解除方法を話せないわね。
話したら無効になって私の呪いは一生解けないままだ。
「七海、あとでメールで送る。
でもこれは誰にも見せないで、見せたら効果が無くなる可能性があるから」
「なるほど、分かりました」
「ちょっとー?僕には説明してくれても良いんじゃないの?」
「あんたは1番ダメ」
「真白、あんたって言わないで。僕傷ついちゃう……」
シクシクと泣き真似をする。
なんなんだ、この人。
七海曰くこの人は呪術師最強らしい。
こんなヘラヘラしてる男が。
「辻咲さんの方は呪力に異常はなさそうですが、念の為数日間は護衛をつけましょう」
「護衛なら最強の僕が居るから心配ないって〜」
「五条さんは辻咲さんが行く筈だった任務に行ってください」
「えー、やだ。めんどー」
「特級案件を面倒くさいで片付けるな」
珍しく七海の口が荒くなる。
元々クソとか言ったり、言葉遣いは荒い時があったけどそれでも基本は丁寧語だった。
それだけ信頼している人物ということなのか、この五条という男を。
「じゃあわたしは真白の報告書提出して来るよ」
「あ、硝子〜、それ異常なしでよろしく〜」
「また?何度も嘘重ねるとわたしの信頼がなくなるんだけど」
「良いじゃん1回ぐらい嘘ついたって」
「……分かったよ、今回は真白の為に偽装しとく」
「さんきゅ、硝子」
特級が負傷し、呪いを負ったとなると、その呪いが酷くなる前に始末しに来るだろう。
大きな被害を出す前に。
昔から変わらない、自分達の保身しか考えていない人は。
「私も暫くは様子を見る為に高専に通います。
良いですか、あの人に何かされそうになったら遠慮なく殴ってください。
そして必ず私に報告を」
「一体僕のことをなんだと思ってるのさ」