第2章 過ち
「……ん?
その情報はなぜ私に共有されてないの?」
「少女の言葉の真偽が分からないからですよ。
少女もまた呪いを受けていて胸元に刻印が出ている」
「じゃあその子も声を?」
「いえ……両目共、失明しています。
反転術式でも治すことは不可能でした」
「そんな……」
まだ小さく未来ある子の目から光を奪うなんて。
こんな事をする呪霊とは今まで会ったことがない。
人間を食らうだけじゃないの?
「そして3例目がここで起きた釣り人の失踪です。
こちらは目撃者は皆無です」
「え?でもさっき何かに惹かれるように海に入って行ったって……」
「はい。そう聞きました。
しかしそう証言した方は昨日から行方不明になって居まして、確認が出来ません」
「行方不明?まさか……」
「可能性はあります。が、事実不明です」
もう4例目は起きてしまってるってこと?
「……七海の仮説は?」
「お恥ずかしい話ですが分かりません。
この件は別の術師が2週間程前から調査をしていますが、何も進展はありません」
「2週間前?」
「はい。別の術師が調査を。
状況的に見て2級では心許ないと上が判断し私が調査を引き継ぎました」
波が少し荒くなって来た為、波打ち際から離れた。
打ち付けられる波は岩をも削る勢いで周りの砂を飲み込んでいく。
なんか嫌な感じだな。
今日は天気が悪くなるって確かテレビで言っていた。
天候が崩れれば海面も、視界も悪くなる。
「辻咲さんの見解は?」
「……」
「辻咲さん?」
「……刻印。涙型。失語。失明。
刻印は呪詛なのか?それにしては個体差が出過ぎだ。声。目。
消えたのは男だけ。人数か?
なぜ彼女達は生き延びた、何かを失った。
……うしなった?」
昔から深い考えに入るとブツブツと呟いてしまうのが悪い癖。
そのせいで不気味がられてしまうのは日常茶飯事だ。
でも声に出すのが1番思考がまとまる。
「……七海。
被害者の彼女達に何か変わったことは起きなかった?
例えば……何かを得たとか」
「はい。1例目の方は仕事が軌道にのり、2例目の方は失踪中の母親が保護されました。
あの、これが何か?」
「なるほどね……ぜーんぶ分かっちゃった。
呪いの正体も、彼女達にかけられた呪いも。全部ね」
その瞬間強い光が水面に落ちた。
ゴロゴロと雷の音がする。