第2章 過ち
「っ……」
目の前がクラクラと揺れる。
再び襲って来た強烈な睡魔。
それもそうだ、この1ヶ月出張で任務をこなしていてほとんどまともに寝れていない。
その前の月も長期任務で身体に十分な休息を与えられていない。
昨日も悟に身体を貪られて寝てない。
限界が来ない訳がない。
「辻咲さん?なんで外に居るんですか?」
「んー、虎杖くんが今着替えてるから。
流石に制服だと悪目立ちすると思って」
「なるほど。
ホテルは五条の名前で3人、と予約があったようです。
他に空きもないので変更は難しそうですね」
「悟って変なところで抜けてるよね」
「……眠いんですか?」
「んー?」
「舌、上手く回ってませんよ」
「かれこれ1ヶ月まともに睡眠取れてないからね」
「……今日は任務はあとにして、先に寝ましょう」
ナナミンが私の腕を引いて部屋の中に入る。
「そういう訳にはいかないの」
「寝不足で働いてても大して役に立ちません」
「酷いこと言う……」
「そうそう、先生は寝てなよ!さっきも疲れた顔してたし。
俺とナナミンで調査行って来るからさ!任せて!」
虎杖くんがそう拳を握ると、タイミングを計ったように私のスマホが着信を告げる。
昨日悟が無理矢理渡して来たスマホが。
「……なに」
「何ってこわー。無事七海と合流出来たー?」
スマホから、脳天気な笑い声が聞こえる。
聞き間違えようのない、五条悟の声。
私の寝不足の原因。
「出来たわよ。先に知らせてくれても良いじゃない」
「だって現地でバッタリ会った方が面白いじゃーん?
あ、ていうか明日大事な訓練あるの忘れてたんだ。
てことで悠二高専に戻って来て」
「明日!?」
「そそ、明日。
そっちは七海と2人でなんとかしてね〜、じゃあ!」
ブチッと音がして電話が切れる。
スピーカーにしていなくても全員に内容が伝わっている。
「俺トンボ帰りかよ……せっかく来たのに」
「虎杖くん、高専帰ったら1発悟を殴っておいて。
呪力込めたので全力でね。私が許可する」
「あ、私の分もお願いしますね。虎杖くん」
あいつはどれだけ私達を振り回すんだ。