第9章 サヨナラ
「何があったか話してくれる?」
「分かんないの。起きたら凄く寒くて頭も痛くて……」
「とりあえず体温計ろうか」
「だ、大丈夫だよ!それ程じゃないし」
「真白の大丈夫は信用してません!
てかあんなに苦しそうだったのにそれ程じゃないとか言う〜?」
はい、と渡された体温計を渋々脇に挟む。
音が鳴るまでの時間が異様に長く感じる。
なんだか空気が沈んでいる気もする。
って、それもそうか。
「何度だった〜?」
音が鳴るや否や私から体温計を取り上げる悟。
その表示を見てピタリと動きを止めた。
「真白、寝てな」
「え?」
「良いから寝てなさい。てかこんなに熱あるのになんで僕に連絡しないの!?
死んじゃうでしょ!」
眉間に皺を寄せた悟がズイッと顔を近付ける。
その手の中にある体温計は40.1度を差していた。
そりゃ寒気も頭痛も酷い訳だ。
「……連絡したもん」
「ん?」
「連絡した!でも悟電話出てくれなかったじゃん!」
「電話?あー、今電池切れてて……ごめん」
「嫌われたかと思ったんだから……もう声も聞きたくないぐらい私のこと嫌なんだと」
「っもぉー、そんなこと有り得ないから!ごめんね。
ちょっと待ってて、速攻で硝子に薬貰って来るから」
髪を撫で、立ち上がる悟。
このまま離したらまたどこかへ行っちゃう。
そう思ったら軽く服を整える悟の手を掴んでいた。
「どこにも行かないで」
「薬貰って来るだけだよ?」
「いや。薬無くても治る」
「辛いのは真白だよ。ちゃんと薬は飲まなきゃダメでしょ。
すぐに戻って来るから」
「……寂しいの」
「んんん、しょうがないなぁ。じゃあ真白スマホ貸して。
恵に薬貰って来させるから」
「ん。あっち」
スマホがある場所を指す。
ドア付近に転がっている筈だ。
「なんであんなとこにあるの?てか画面割れてるじゃん」
「……悟が電話出てくれなかったから」
「もう。だからって物に八つ当たりしちゃダメでしょ?」
「ごめんなさい……」
「じゃあ充電器貸して」
スマホを充電器に繋ぐとすぐに戻って来る悟。
そんな悟に、ベッドの隣を軽く叩いて誘った。
「……さみしい」
「あんま煽んないで、抱きたくなるから」
クシャクシャと雑に髪を撫でられるとベッドの縁に腰を下ろした。