第9章 サヨナラ
何回も何回もコールしてるのに一向に出る気配はない。
なんで?仕事中?
それともこんな私なんてもう嫌になっちゃった?
やっぱり若くて可愛らしい子の方が好きなのかな?
ずっとコールしていると留守電に切り替わり、その度に電話を切った。
「はぁっ、はぁっ……」
身体が寒くて寒くて堪らない。
ひょっとしてこのまま死ぬのかな。
悟に謝れないまま死んじゃうの?
そんなの嫌だ。ちゃんと謝って、仲直りして、もっと悟と一緒に居たい。
「悟……」
心臓がギューッと掴まれたように痛い。
頭も割れるように痛く、ボロボロと目から涙が溢れる。
寒さと痛みで思考が纏まらない。
一向に繋がらないスマホを壁に投げつけた。
鈍い音がして割れるのが分かる。
「ッ、う……はぁ……」
身体の不調に負のエネルギーが溜まっていく。
バチバチと私の身体が電気を纏い始める。
寒い、痛い、苦しい。
助けて。
「高菜?」
「真白サン、どした?大丈夫かよ」
「狗巻くん、真希さん、だめ、来ちゃ」
扉の向こうから声がする。
このまま扉を開けられたら2人まで巻き込んでしまう。
私の電気は2人には防御が出来ない。
これ以上誰にも迷惑を掛けたくない。
回らない頭で必死に考える。
お願いだから落ち着いて、静まってよ。
また私の術式で誰かが怪我をするところなんか見たくない。
「真希さん、真白さんに何が!」
「あ?分かんねーけど、なんかヤバそうだろ。恵、悟は?」
「それが電話繋がらなくて」
「チッ、嫁が大変な時に何やってんだよ、あいつは」
「狗巻先輩の呪言でなんとかなります?」
「……おかか」
扉を挟んだ向こう側で生徒達の声がする。
お願い、危ないから離れていて。
静まることのない私の呪力が、君達を傷つけてしまわないとも限らないから。
『鎮まれ』
狗巻くんの声がダイレクトに聞こえる。
拡声器?扉越しでもちゃんと聞こえるから多分そう。
「狗巻先輩でもダメなのかよ」
「棘だって万能じゃねーんだ、特級相手じゃ効果も薄まる。
相手は真白サンだしなぁ」
「あれ、皆で集まって何してんの?」
「悠二、悟知らね?」
「五条先生ならさっきまで一緒に地下室で稽古してたけど、なんで?」
「「緊急事態だ、すぐに呼んで来い!」」
「しゃけ!」
「お、おう!」