第9章 サヨナラ
「……今の真白とは一緒に居られない」
そう言い残して部屋から出て行く悟。
その背中から漂う怒りのオーラは凄まじかった。
最近はあまり見ない感情を顕にした悟。
「だって、ほんとのことじゃん」
「ま、母体が死んだら赤ちゃんも死ぬんだけどね。
今のは真白が悪いよ。
しばらくは気まずいだろうからこの部屋泊まっても良いよ」
ここは高専の医務室だ。
硝子の治療を受けに呪術師が集まる場所。
「ありがと、硝子。
でも頭冷やしたいから自分の部屋戻るよ」
「そう。1人じゃ心配だから誰かに付き添って貰いなね」
「大丈夫よ、思った程傷も深くないし、平気」
腕に繋がれた管を抜いて貰い、ベッドから立ち上がろうとすれば皆に止められた。
「ちょちょ、センセ傷開いたらどーすんの!?
結構エグい傷だったんだかんね!?」
「そーそー、俺部屋まで運ぶよ?」
「え?いや、大丈夫よ、このぐらい」
「拒否権ないんで」
「そうそう。虎杖GO」
「おう!」
「え、ちょ、ひゃっ」
恵が硝子から薬やら包帯やらを受け取り、その間に虎杖くんが野薔薇ちゃんの指示で私を抱き上げる。
片手で軽々と持ち上げられてしまう。
生徒に運ばれるなんて恥ずかしい……。
「ごめん、皆。迷惑かけて」
「別にいつもの五条先生に比べたら全然平気なんで。
それ言うなら五条先生に言っといてください」
「悟とは今話したくない」
「そりゃレディーの顔叩いたのは許せないけどさ、さっきのは真白センセが悪いよ」
「そう……かな?」
部屋の前に着き、恵が鍵を開ける。
私恵に合鍵渡してたっけ?
なんて首を傾げれば苦い顔をされた。
全然覚えてない。
「五条先生が、留守の日はよろしくって前にくれました。
言っときますけど使ったのは今が初めてですからね」
「そうなんだ。なんかごめん」
「あの人昔から人になんでもかんでも押し付け過ぎなんですよ」
ベッドに寝かされ、枕元に色々と準備をしてくれる。
水や薬、包帯、野薔薇ちゃんが着替えも用意してくれた。
なんて優しい子達なんだろう。
私には勿体ないなぁ。
「ありがと、皆」
お礼を言って、ゆっくり休んでと皆が帰って行った。
賑やかだった室内は一気に静かになる。