第7章 灯火
「硝子ー、まだ起きてるー?」
「起きてるよ、今日は夜勤だからね。どうした?」
「真白が風邪ひいちゃって、薬頂戴」
「あの真白が?珍しいね。風邪の症状は?熱?」
「熱はないって言ってたよ。なんか気持ち悪いらしい」
「は?」
「ご飯も食べれなそうだし点滴とか、あと1発で治る薬あればそれ」
真白は昔から体調管理をしっかりしていた。
睡眠時間は少ないのに、風邪をひいたところは滅多に見たことがない。
「……真白まだ起きてる?起きてるなら直接様子見に行くよ」
「良いの?お前仕事は」
「悟がそれ言う?それに真白の風邪じゃないかも」
「?違うの?」
「さぁね、詳しいことは診てみないと分からないけど」
「病気!?」
鞄に何やら検査器具を詰めている硝子。
たかが風邪にそんなに検査必要か?
てか風邪じゃないかもってどういうこと?病気?治んの?
*****
悟が用意してくれた林檎を少しずつ齧りながら、悟の帰りを待つ。
やっぱり体調が良くない時って寂しくなるなぁ。
早くギュッてしたい。
「真白、大丈夫だった?変わりない?」
「そんなすぐ変化ないってば、心配性だなぁ」
「そりゃあ真白のことだからね。
あ、林檎食べてるじゃん。偉い偉い」
ワシャワシャと髪が乱れるぐらい雑に撫でられた。
少し頭が揺れたけど、でも嬉しいから良いや。
そんな悟の後ろから硝子が顔を出した。
「悟、ちょっと真白と2人で話したいから10分ぐらい散歩して来て」
「やだ」
「女子同士の方が話しやすいこともあるでしょ、ほら、行った行った」
「真白、なんかあったらすぐに連絡してね?秒で来るから」
「ん、ありがと」
半ば強引に押し出される形で、部屋には硝子と2人きりになった。
いつになく真剣な表情。
どうしたんだろう、実はとんでもなく酷い病気とか?
深刻な問題?
「硝子……?」
「体調大丈夫?吐き気?」
「うん、そうなの。なんか身体が怠くて気持ち悪いのがずっと」
「……ねぇ、変なこと聞くけど今月生理来た?」
「へ?あ、予定だとまだ先、だけど……」
恥ずかしくて声が小さくなる。
なんで生理?
そんな疑問が浮かんでも、硝子のあまりにも真剣な表情に言葉にすることが出来ない。