第7章 灯火
遡ること1時間程前。
最後の任務に向かっている途中で恵からメッセージが入った。
普段業務的なやり取りしかしない上に、僕が送っても既読だけの恵からのメッセージはかなり珍しい。
補助監督の子が運転する車の助手席に座りながら、メッセージを開いた。
今日真白さん体調悪そうだったんで様子見てあげてください。
たった1文、そう入っていた。
真白が体調悪そう?
朝見た時は元気そうだったけど、この時期だから風邪でも貰ったのかな?
「悟サン、次で最後の任務です〜。
今日が終わっちゃうの寂しいなぁ……」
「うん、そうだねー。
僕は早く仕事を終わらせて帰りたいんだけど。
っていうか今日の仕事明日に回してくんない?」
「えぇー?あたしと居れるのにぃ?」
隣でハンドルを握りながら文句を言う女の子。
最近よく僕に着いてくれる補助監督。
名前はなんだっけ?忘れちゃった。
僕が言うのもなんだけど、いつも距離が近い。
真白しか興味ないし真白に誤解されるからマジで辞めて欲しいんだけど。
「僕の婚約者が体調崩しちゃったの、だから早く帰りたい」
「婚約者って言ってもォ、まだ婚約してないんでしょ?
パパが言ってたもん」
「でも僕の大事な彼女には変わりないの。
ほら、UターンUターン」
「えぇー、でもパパがぁ……」
パパパパうるせーよ。
お前のパパより真白の方が何倍も可愛くて大事なの。
「でもぉ、悟サンの彼女ってなんかパッとしなくない?
黒髪モサいし変なグラサン掛けてるし、あとなんだっけ?
特級?とか言ったってどうせ悟サンよりも弱いんでしょ〜?
絶対枕で階級取ってるよ、悟サン騙されてるの」
聞いてもいないのに話し始める。
口を開けば真白の悪口ばかり。
前回の任務も今回の任務も、なぜかこの子が着いてくる。
「……少なくとも真白は他人の悪口をペラペラ話すような人じゃないの。
君もパパの力ばっかり借りてないで自分の力でなんとかしたら?
それと、これ以上真白のこと悪く言うなら流石の僕でも怒るよ。
あ、伊地知呼んだからここで良いや。じゃあね〜」
車から降りて伊地知を電話で呼び出し、高専に戻った。
真白はかなり怠そうだったけど熱はなかったみたいだから、とりあえずは一安心。