第3章 相澤消太は間違える
とても深く、青い。
しかし、どこまでも透き通っている。
「これでいいですか、先生」
幻想の瞳を見ていると、不思議な感覚に陥った。
カメラで写真でも撮るかのように脳裏に映し出される。
おもむろに幻想の顔が近くなり、俺にキスをする。俺はどういうわけか為す術なく受け入れる。幻想は俺の肩に手をまわしキスを続ける。
これは確かに現実に「あったこと」だと思わせる。
気づくと目の前に俺の顔を真っ直ぐに見つめる幻想の姿があった。
その姿を見て俺は動揺していた。
今…キス…したのか?幻想と俺が?生徒だぞ?
目の前の幻想が動揺している俺を見てくすりと笑う。
その笑顔を見て俺は気づいた。
「お前、個性使ったな」
そう気づいた瞬間、まどろみのような感覚が晴れやかに消えた。
「私の個性は“記憶を改ざんする”改ざんされた本人はまるでそれが本当にあったことのように感じる。
ただ、本人が記憶の改ざんの矛盾点に気付ければ解除される。つまり、絶対に信じさせる嘘をつくのと同じ」
そう説明して幻想は小さく笑った
「頭のいい人ほどすぐ解けてしまう。流石プロヒーローですね相澤先生」
そういうことか。
幻想と顔を合わせることに気を取られすぎて、自身の個性で幻想の個性を消すことを忘れていた。
「やられたな」
そう言って俺が頭をかくと、幻想は目を合わせるのをやめた。
「ごめんなさい先生。でも怖いでしょ、この個性は」
「だから、不必要に目は合わせません、誰とも」
そう言って少し悲しそうな顔をした。
また突き放された。距離を置かれた。
ここからは、入ってくるなと。
なぜこんなに心がざわつくのだろう。
「じゃあ、これはどうだ」