第3章 相澤消太は間違える
俺は考えるよりも先に幻想の両頬に手を伸ばし
自身の顔に近づけた。
「俺が個性を使えばお前の個性は効かない」
「えっ…」
幻想は何が起きたか理解できずにきょとんとしている。
今度は自身の個性を発動させているため、先程のような妙な感覚はない。
久々に生徒にしてやられたのが悔しかったのか、解明できないこの感情の行き場を知りたいのか俺にも分からない。
そもそもこいつはなぜ俺にキスをした記憶に改ざんしたんだ。混乱させるだけなら俺を殴るとか、そういった改ざんの仕方もあっただろう。
脈絡もない改ざんこそすぐ解除されてしまうのに。
「……んせい!先生!……相澤先生!」
ハッとすると、目の前の幻想は顔を真っ赤にしていた。
「顔近い…もう無理…恥ずかしい!!」
そう言って俺の手を引きはがそうとじたばたしている。
「なんだお前、さっきは自分からキスしたくせに。これはダメなのか」
「してません!!個性使ったし、想像と現実は違います!」
流石に可哀そうになり手を緩めると、幻想はするりと手から抜けた。
「もう、いいですか、部屋に戻って」
幻想は表情が分からない程に顔をそむけた。
「…ああ、悪いな」
俺がそう言うと軽く会釈をして小走りで部屋に戻っていった。
「いや俺何してんだ」
部屋に戻り椅子に座ると、急に自身がした行為に冷静になってしまった。
幻想に言いようもない違和感を覚えているとはいえ……
女子生徒に何てことしたんだ、
完全に方法を間違えたな…