第3章 相澤消太は間違える
【相澤消太side】
せっかく仕事を終わらせたのに、狙ったように電話がかかってきた。
しかも今日中に連絡が欲しいとのこと。
「まったく、勘弁してほしいよ」
体育祭で七位まで上り詰めた幻想の個性を詳しく知ったヒーローが急遽幻想にスカウトをするように施したらしい。
トントン
「来たか」
ノックされたドアを開け、幻想にある程度の説明をする。
幻想は理解能力が高い、俺が話したことに対して1説明すると10の理解が返ってくる。
目を見て話すことはしないが、背筋はしゃんとして話を聞く姿勢にも不快感はない。
他の生徒に比べ手はかからないし、自身の改善点を自身で理解できている。
しかし…
幻想と話すと何か引っかかる。
何か違和感がある。
なぜだ。
何か…
「じゃあ相澤先生、よろしくお願いします。」
ぺこりと頭を下げ、整えられたロングヘアが揺れる。
………。
「まて、幻想。 お前の個性は目を合わせても自身が使おうとしない限り発動はしないんだよな」
そう聞くと少し戸惑い「はい」と返事をした。
「なら目を見て話してもいいんじゃないのか、顔を合わせることで得る情報というのは多いと思うが」
そう弁明したが本心ではない。
本心は、幻想に対するこの違和感を解明させたいという感情だった。
なぜ頭に靄がかかるのだろう。
そう言うと幻想は少し黙って。
ゆっくりと顔を上げた。
教師失格だ。
不覚にも綺麗な目だと思ってしまった。