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相澤消太は不健全に恋をする

第22章 幻想叶は大人になる


「おい、それくらいでやめておけよ。初めてなんだろ」
そう言うと轟君は私の持っているコップを取り上げようとする。

「全然…大丈夫…、わたし多分強い…」
私はそう言って私は轟君の手を制止する



先生の話をしてから…
相澤先生の顔を思い出してから

私のお酒のペースは速くなっていった


初めて飲むお酒は美味しいのかはよくわからなかったけど
飲めば飲むほど、思い出したくない記憶を遠ざけてくれた


何だか身体がふわふわする感覚で、気持ちがいい
心配する轟君を横目に私はその後も何杯かお酒を飲み干した


そして23時半になると、各々が帰り支度を始めた
私も轟君に手伝われお店を出た



「幻想、家まで送るよ」
そう言うと轟君は私の腕をつかんだ

「え…いいよそんなに遠くないし…」
そう私が断っても轟君は手を離してくれない


「送るよ」

そう言う轟君の顔が
あまりにも真剣な顔をしてたので私は送ってもらうことにした



帰り道、ふわふわとした感覚に
夜風が顔に当たって気持ちがよかった



「…今日はたのしかったね、とどろきくん」

そう言うと轟君は微かに笑って答えてくれた


でもそのあとすぐ落ち着いた顔になって

「俺、お前と同じ事務所でよかったよ」

そう私に言った


「…ふふっ、なんで?私も轟君と同じ事務所でよかったよ…いつもありがとう」

なんだかその顔がおかしくて、
小動物みたいで可愛いなと思った


「プロヒーローになって、綺麗事ではやっていけないことが多くなった。そういう時俺はすぐ他に気を取られて、余計な事を考える」

轟君は私の横を歩きながら話を続ける


「だけどそういう時、幻想を見ると自分の原点を思い出せるんだ」


ふわふわとした感覚に包まれている私には轟君の話は難しかったけど、
轟君がとても優しい顔をしているのはよくわかった




そんな話をして歩いていると
十字路にでた


夜風は気持ちがいいけど、体の火照りを冷ますには物足りない。
私は無意識に、冷たいものが食べたいと考えていた



「とどろきくん、ここまででいいよ、私コンビニ寄りたいから…」
そう言うと轟君は

「それくらい付き合うよ」
と言って私を気にかけてくれた


「ううん、ほんとに大丈夫、もう家近いし」
そう言うと少し心配そうな顔をして「分かった、またな」と私に背を向けた
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