第17章 祭りに敵(ヴィラン)は潜むⅡ
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緑谷の話では、敵(ヴィラン)は大きさ4メートル程で大柄。
個性は不明。
幻想が二人を救い出し、緑谷に受け渡した瞬間
幻想自身も敵(ヴィラン)に刺されそのまま連れ去られたようだった。
あいつが…連れ去られた…?
目的は何なんだ、何のために連れ去ったんだ。
だめだ、教師として冷静にならなくては。
まず学校と警察に連絡…
そう考え携帯を取り出すが、番号が上手く押せず
自分の手が震えていることに気付いた。
「……くそ!!」
もう一度電話をかけようとすると、背後で生徒がざわついていた。
「だめだよお茶子ちゃん!!」
「そうだよ大怪我してるんだから!」
振り返ると、女子が止めるのも無視して麗日が起き上がっていた。
麗日の視線はこちらに向けられていた。
「どうした麗日、なんだ」
そう言うと麗日は泣きながら、
「……あいつの目的は、雄英の生徒を殺すことなんです…。殺して…自分の存在を世間にアピールしたいんちゃうかな……、だから早くしないと…早くしないと叶ちゃんが…」
そう言った。
「…幻想を、殺す…?」
言葉にすると、その重みを実感してしまった。
すると今度は緑谷が俺に
「先生、殺人目的ならあいつはヒーローや警察に捕まる前に殺してしまいたいはず、だから遠くには行ってない!!!」
そう言って走り出してしまった。
「まて!…緑谷!!」
そう声をかけるも、
緑谷はもう見えなくなっていた。
「ほかの生徒は、祭りにいる人たちの避難誘導。飯田は学校に先生たちを呼んできてくれ」
「警察とヒーローにも連絡を頼む、誘導が終わっても絶対に生徒単体では行動するな」
絶対に殺させない。
あいつは、絶対に殺させないぞ。
「俺は幻想を探しに行く」
煮えたぎる感情とは裏腹に、
その気持ちがヒーローとして、教師として、俺を冷静にさせた。