第17章 祭りに敵(ヴィラン)は潜むⅡ
【相澤消太side】
昨日マイクが言った
『いや……、幻想叶という名前は聞いたことはないが、
“個性”だけならお前が前に話に出していた気がする』
結局、あの発言の解明はできなかった。
時間も時間で、調べたりできるような状況ではなかった。
しかしあまりに動揺し、苛立っている俺を見てマイクは
『そんなに引っかかるなら、俺の方でお前が過去に関わった人間に似たような奴がいないか調べてみるよ』
そう言ってくれた。
しかし、消化できない感覚の気持ち悪さは、限界を迎えていた。
おかしいと感じる俺の直感と、記憶が結びつかない。
幻想が目を見て話してくれることが嬉しい反面、
その瞳に何か隠されているような気がする。
そう感じるようになっていた。
それならいっそ、あいつに直接聞こうと思ってしまった。
俺の個性を使えば万が一あいつが個性を使おうとしても使えない。
もう、教師として感情を落とし込めるほど
幻想に無関心ではいれなくなっていた。
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祭りの出番の五分前になった時
生徒が三人いなかった。
麗日、蛙吹、…幻想。
三人とも、何かを投げ出したりする性格ではない。
俺は生徒全員で探すように指示を出しつつ、
嫌な予感がしていた。
その予感は的中し、二人を抱えてこちらへ走ってきた緑谷を見て
最悪の事態を想像してしまった。
「…先生!!!この二人意識がないです!!!…それに幻想さんが!!!」
肩を上下させる緑谷が抱えていたのは麗日と蛙吹だけ。
麗日は外傷が目立ち、どちらも意識がない
重体だとすぐ理解した。
「おい誰か!!!すぐに救急車呼べ!!」
そう叫ぶと生徒の何人かがこちらに駆け寄ってきた。
ただならぬ状況に1年A組の多くの生徒が集まるが、
そこに幻想は見当たらない。
「おい…誰か、幻想は……」
話し終える前に、緑谷が俺の腕を力強く引っ張った。
「先生!!!」
緑谷の怒りに染まったその顔を見て、最悪の言葉を予想してしまう。
「……幻想さんが!!!敵(ヴィラン)に連れ去られました!!」
全身の血が冷やされ、
誰かに心臓を潰されているような感覚だった。