第13章 相澤消太は嫉妬する
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職員室に戻った俺はオールマイトさんに声をかけられた。
「どうしたんだい相澤君、そんな顔して」
「なんですかそんな顔って」
「なんというかいつも以上にご機嫌斜めじゃないか」
「俺はいつもこんな顔ですよ」
そんな会話をしながら自分の席に着いた。
今日の座学の資料をまとめている間、あの時の会話を思い出す。
『だから、不必要に目は合わせません、誰とも』
そう言っていた。
まるで自分は一生人と目を見て話さないと決意しているかのように。
俺には変えられないのだと思った。
あれ以上踏み込める話でもないと思った。
だけど、
緑谷はあいつを変えた。
そう再認識すると、腹の奥が熱くなるような感覚がした。
1年A組というクラスを少しずつ理解していく中で、緑谷はクラスの中でも大きな存在であると分かった。
誰よりも強くトップヒーローを目指し、自分に厳しい。純粋に、真っ直ぐに意見することからその意見は周りにも素直に受け取ってもらえる。
教師として顔に出すことはないが、そんな緑谷が俺は羨ましく、眩しく思っていた。
上手く溶け込んでいるようで、浮いている。
心を開いているようで、距離を取っている。
そんな幻想を、あいつなら…
緑谷なら変えられるのだろうか。
「オールマイトさん…」
そうつぶやくと斜め前の席のオールマイトさんが「ん?」とこちらを見た。
「緑谷って、モテそうですよね……」
「…ん?え、…相澤君…?」
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俺らしくもなく色んなことを考えていると、
あっという間に最後のホームルームになった。
「はい、座れ、ホームルームするぞ」
そう言って教室内に入ると、朝のように幻想の周りに人が集まっていた。
大人気かよ。
生徒たちが席に座るのを横目に教卓につく
「今日は少し変わった話がある。」
そう言うと生徒たちは緊張した顔で俺の顔を見る。
こういう緊張感を与える話をするとき、
幻想は他の生徒と違って俺を見ない。
だけど…
今日は顔を上げている。
それを見て俺は、確かにあいつに変化が起きたことを実感する。
言い表せられない感情を飲み込み、資料に目を通す。
「えーと、話だが。今回1年A組にこの町で開かれる祭りへの参加依頼が来た。」