第10章 幻想叶は思い出してしまう
事件の後から私にはお世話になっている先生がいた。
しかもフラッシュバックの治療はカウンセリングと薬剤だからリカバリーガールでは無理なのだ。
じろり、と私の表情を相澤先生が伺う。
ただでさえ相澤先生と二人で話すときは緊張してるのに、そんなに凝視されるとどこを見ていいのか分からなくなってしまう。
どうしよう、めちゃくちゃ怪しがられてる。
でもフラッシュバックのこと言うわけにいかないし。
事件のことを話せば、きっと先生にかけている記憶の改ざんは解けてしまう。
「……あの、」
そう私が話そうとすると、相澤先生は外出届にハンコを押して私に渡した。
「詮索はしない、お前にも言いたくないことはあるだろ」
それだけ言うと先生はそっぽを向いてしまった。
「あ、ありがとうございます。」
そう言って私は外出届を受け取った。
「ただし条件がある、病院の行きと帰りにクラスのやつを一人同行させろ」
「え?」
病院の、行きと帰りに…?なんで?
クラスの人にだってあまり知られたくないのに
「お前最近足元がふらふらしすぎだ、気づいてないのか?そんな状態で街に一人で出してみろ、事故になるぞ」
確かに眠れないせいか、いつもより上手く歩けないけど隠せているつもりでいた。
「俺は外出申請日の土曜日は仕事があって付き添いしてやれない、クラスの誰かは空いてるだろ、頼んでみろ」
「で、でも!」そう反論しようとすると
「それが条件だ。」と先生に強く言われてしまった。
「……分かりました」
そう言って職員室を後にした