第10章 幻想叶は思い出してしまう
【幻想叶side】
スカウトされた事務所でのヒーロー活動をしていく中で、
私はなぜ自分がヒーローになりたいのか考えるようになっていた。
ヒーローになりたいと両親に言った時
母も父も大反対していた。
『 ヒーローほど危険な職はない、
ましてや家族や親類からヒーローになった人は誰もいない 』
両親の心配も
その言葉の重みもよく理解していた。
だけど、
だけど憧れてしまった。
あの事件の時、私の心は折れなかった。
あいつらの計画では私が何も考えず命令通りに個性を使うようにならないと、都合が悪いようだった。
こんな理不尽な奴らの手に落ちたくはないと思ったから、抵抗していた。
もしかしたら殺されるのかもしれないと思った。
折れてしまった方がもう楽なのではないかと思った。
繰り返される暴行の中で、私の意識は朦朧としている中
彼は助けに来てくれた。
彼は私に「よくがんばった」という言葉を残してくれた。
私はその言葉を聞いて初めて自分が「がんばっていた」ことを自覚する。
その言葉は重く、優しく
私にはたまらなく眩しかった。
私の個性で今の相澤先生は私のことは忘れてしまっているけれど
私には今も鮮やかに記憶に残っている
あの頃を思い出す度
自分が何を目指しているのかあなたが教えてくれた。
しかし、
それは同時にあの事件のトラウマを呼び起こすこととなる。
「……めて…!!……お願いッ……やめてよ!!!」
目が覚めると、視界にはいつもの天井があるだけ。
息が上がり、汗で髪も体もぐちゃぐちゃになっているのが分かる。
「はあ…はあ…」
布団から起き上がり時間を確認する
深夜2時
私は事件のフラッシュバックを見るようになっていた。
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「外出届?…珍しいな、どうした」
相澤先生は私の外出届を受け取ると不思議そうに私を見た。
ヒーロー事務所での職業体験がはじまってから、私のフラッシュバックは酷くなり満足に睡眠がとれない状態に陥っていた。
「ちょっと、病院に…行きたくて」
そう言うと相澤先生は目の色を変えて私の顔を見つめる。
「病院? ある程度の怪我や病気ならリカバリーガールが対処してくれると思うが」
「…お、お世話になっている所があるのでそこに行きたいんです」