第4章 代償
匂、い?
なんだろう。
嫌な予感、する。
「桜月?……ねぇそーいえば美桜は?さーちゃん帰って来た!って嬉しそうに飛び出してったけど」
「あ、うんなんかアイス買いに行くってコンビニ行った」
「コンビニ?」
さっきから、心臓から嫌な音、する。
動悸が、する。
なんだろう。
なんか………。
「だって美桜、バックここにあるよ?」
「え?」
「ほら」とでもいいたげな母親の視線を追ってソファーを見れば。
確かに美桜のバック。
「何なにー?珍しい、ケンカ?」
「……………っ」
バカだ、あたし。
なんで気付かなかったんだろう。
「桜月?え、何ほんとにケンカ?」
美桜。
美桜は、知ってたんだ。
「なんでもない!あたし、財布届けてくるから!」
「桜月!?」
あの瞬間。
あたしに抱きついた、あの瞬間。
気付いたんだ。
『蓮』の、匂い。
だから。
美桜、いつから知ってた?
様子違ってた?
いつもと同じだと、思ってた。
気付けなかった。
美桜が気付いてるの、気付かなかった。
蓮の残り香。
そんなとこまで、全然気がまわらなかったよ。
あたし、自分のことばっかりで。
全然美桜のことわかってなかった。
わかろうとすら、してなかった。
家から駅まではそんなに距離はない。
普通に歩いてれば。
たぶん今頃蓮は電車の中だ。
でも。
たぶん。
まだ駅には、行ってない。
美桜、すぐに追いかけた。
たぶんすぐに追い付くはずだ。
駅までの道のりを、全速力で走った。
「!!」
やっぱり。
いた。
蓮と、美桜の姿を視界が捉えて。
速度をゆっくりと、緩めた。
ふたりとの距離、数メートルで、蓮の視界とぶつかって。
追うように。
美桜がこっちを振り向いた。
「…………さーちゃん」