第4章 代償
「そんなことしない」
蓮の腕をほどいて。
そのまま蓮の首へと腕をまわし、自分から、唇を押し付けた。
驚いたように動きを止めた蓮の唇を割って、舌を差し込めば。
ぐ、って。
頭の後ろと腰にまわされた蓮の掌。
優位に立ってたはずの口付けは、やっぱりいつの間にか、蓮が主導権を握ってる。
口の中は蓮に絡みとられ呼吸まで奪われて。
逃げ腰になるあたしを、しつこく蓮が追いかける。
ねっとりと。
執拗に。
しつこいくらいに、舌が絡まった。
「………っ」
やっと離れた唇から零れた唾液を手の甲で拭き取れば。
得意気に笑う蓮と、目があった。
やっぱり、わざと………っ
「もう降参?」
こっちは息も絶え絶えだってのに。
なんであのキスでこんなに平然としてられんの、この人。
「桜月」
ぎゅ、て。
優しく抱きしめられて。
ちょっとだけ、思考停止。
「俺たち、付き合うってことでいんだよな?」
「え」
付き、合う………。
「おまえと美桜が仲いいのは知ってる。良くおまえの話、嬉しそうにしてたし。お姉ちゃんがどーしたこーしたって、おまえの話ばっかしてた」
「…………」
「………美桜の言う、"お姉ちゃん"が桜月だなんて思わなかったけどな」
自嘲気味に抜ける蓮の吐息が、耳へとかかる。
「やっと捕まえた」
「………れ、ん……っ」
「もう絶対逃がす気ねえから」
「…………っ」
ぎゅ、て。
蓮の背中へとすがるように両手をまわした。
「あたしも………っ」
もう、逃げない。
蓮が好き。
誰に何を言われても。
この気持ちは変わらない。
変えられない。
ずっとずっと忘れられなかった。
ずっとずっと、忘れたくなかった人。
蓮が、好き。
「……………泣き虫、変わってねーのな」
少しだけ体を離して。
蓮の指先が涙を拭う。