第3章 恋慕
これはきっと。
恋愛感情なんかじゃない。
蓮に何度も何度も教え込まされた快楽を、体が欲しがってるだけなんだよ。
蓮の甘い声に。
蓮のキスに。
いちいち体が火照るのは。
体が覚えてるから。
ただ、それだけ。
恋愛感情なんか、一粒だって持ってない。
「……………ちょ…………っ」
「黙っとけよ」
夜。
蓮の部屋の、ドアを入るとすぐに。
ほんとに早急に。
奥深くまで入り込んだ蓮の舌が、口内を暴れまわった。
呼吸全部を奪うような口づけに。
溺れそう。
角度をかえる度に。
「……………れん…………っ」
少しだけ離された唇から拒否の言葉を発する前に。
すぐに飲み込まれる言葉。
撫でるように頭に触れられていた左手は。
いつのまにか首の後ろから差し入れられていて。
言葉だけじゃなく、体まで全部蓮に支配される。
唇を離された途端に、やっぱり力の抜けた体が倒れこむ前に。
蓮の腕が膝裏に回されたと思った瞬間。
体が宙に浮いた。
「………え、や…………まって」
「待たない」
「じゃなくて、歩く、歩くから」
少しだけの距離。
横抱きに抱えられるようにして運ばれたベッドの上。
さすがに羞恥心で両手で顔を隠した。
「…………それ」
「?」
「つけたの、あいつ?」
『それ』が、なんなのか。
頭が理解するまで数秒。
理解できた頭が指令を出す前に、勝手に動いた右手。
条件反射。
さっき、噛み付かれた時に感じた痺れの正体を認識した体は、反射的に『それ』を隠したんだ。
「…………………わざと?」
そんなあたしの様子に、一気に怪訝に歪む蓮の表情。
そのまま、躊躇なく蓮は、他の男が残した痕跡に、舌を這わせた。
「ちょっと………まっ………」
「やだ」
「………………っ」
やだ、じゃない。
舌の感触が、ダイレクトに脳に伝わってきて。
変になる。
「蓮……………っ」
「いいから、黙ってろ」
噛み付いた傷痕を丁寧に舐めとっていく蓮。
「さっきも………っ、それ」
「まだ答え聞いてねーし」
「…………っ」
「他に男がいんのに、俺と出来んの?」
「な……っ」
「8年の間に、変われば変わるもんだよな」