第3章 恋慕
余裕なんて、ないのに。
なんにも考える余裕なんて。
そんな隙なんてくれないくせに。
口塞がれて。
強引に貫かれて。
なんの抵抗もさせてくれないくせに。
なんでそんなこと、ゆーの?
『好きだ』
なんて。
口塞がれてたら、なんにも言えないじゃない。
抵抗もさせてくれないくせに、受け入れることも、させてくれない。
「桜月」
「ふ……ッッ、ん━━━━━っ」
ぐ、て。
一際大きく深く突き上げた、あと。
蓮は背中めがけて、生暖かい液体をぶちまけた。
「…………」
「…………立てるか?」
放心状態の、あたしへと。
蓮が手を差し出すけど。
思い切りその手を払いのけて外へ出た。
「…………最低」
「………」
「嫌い」
蓮に背中を向けたまま。
感情の消した声で、何度も何度も、うわ言のように呟いた。
「嫌い、嫌い、蓮なんて、だいっきらい」
いつもいつも。
あたしの気持ちなんておかまいなし。
自分の都合ばっか押し付けて。
だいっきらい。
「……………………っ」
「さっきから、なんで泣いてんの」
涙ごと隠した両手をとられて。
蓮に晒した、泣き顔。
なんでそんなに、優しく声なんてかけんの。
さっきまで、あんなに殺気だってたくせに。
いきなりなんで。
そんな傷ついた顔、すんの。
「…………っく」
止めなきゃ、って。
今すぐ涙止めなきゃって思ってんのに。
そんなに優しく抱き締められたら余計切なくなる。
涙、止まんないじゃん。
「………………拒否んねぇんだな」
「…………………拒否るに決まってんでしょ」
強気で返すと、抱き締める腕はそのままに。
ふ、って。
笑う気配がした。
………………蓮の、匂い。
拒否するはずだった両手は、そのまま蓮の背中にまわされて。
ぎゅうって、力を入れた。
「桜月」
ビックリするくらいの甘い声に。
体が勝手にビクっと反応する。
「おまえ今夜、俺の部屋来るか?」