第1章 最悪の再会
蓮、が。
美桜の彼氏。
『結婚したい人がいる』
それが、蓮。
なんで。
どうして。
嘘だ。
そんなの絶対、嘘だ。
だって違ってた。
雰囲気だって。
全然違う。
あんな優しそうなの、蓮じゃない。
蓮はもっと。
もっと。
強引、で。
人を射抜くような、眼差しで。
鋭くて。
「桜月」
「ぇ」
ドクン………ッッ
なん、で。
「開けろ」
「…………っ」
「ドア、蹴破んぞ」
強引で。
鋭くて。
「桜月」
「………美桜のとこ、戻って」
「嫌だ」
「戻って!!」
「………頼むから、ドア開けて。話したい、桜月」
「………っ」
ずるい。
そんな、弱い声。
あたしの知らない、蓮の声。
美桜だけが知る、蓮。
ずるい。
そんな声。
逆らえるわけ、ないじゃん。
「…………」
ガチャリ、て。
ゆっくりとドアを、開ければ。
勝ち誇ったような、蓮の笑み。
あたしの良く知る、蓮の顔。
「!!」
慌ててドアを閉めようと、するけど。
向こうの方が昔から1枚も2枚も上手。
少しだけあいた隙間に指先を押し込んで、それを阻止するんだ。
体の一部でもドアの中へ入っちゃえば。
もう蓮の勝ち。
ドアは簡単に、全部開いた。
「甘いな、昔から」
「…………っ」
蓮。
8年ぶりに、見た。
背丈も、記憶の中よりだいぶ伸びて。
声も低い。
だけどあたしの知ってる、蓮、で。
「また逃げんの」
両腕を壁へと付けて、囲まれて。
逃げ道を塞ぐ。
目の前に、蓮の顔。
やっぱり。
強引で、鋭くて。
蓮だ。
「………髪、伸びたんだな」
ふい、と、背向けた視線と、顔。
その隙に髪を一束、掬って。
蓮は指先でサラサラと流していく。
「似合ってる」
「…………っ」
触れた髪の毛一本一本に、全神経が集中する。
熱い。
動けない。
「桜月」
━━━━━━━ドクン
ドクン ドクン ドクン
「こっち向いて。顔、ちゃんと見たい」
「…………っ」