第3章 恋慕
『そりゃどーも、心配してくれて』
「だ!!っ、から………っ」
駄目だ。
完全に笑われてる。
電話の向こうから聞こえてくるのは笑い声だけ。
『変わってねーのな、ほんと』
「………っ」
また。
それ。
あたしは外見だけじゃなくて中身まで8年前から成長出来てないってこと?
『なんだよ』
「別に。ちょっと自信喪失中、ってゆーか…」
『は?』
「だからなんでもないの!そっちこそ、消灯時間とっくにすぎてんじゃないの?看護師さんに怒られるよ」
『健全な大人が9時になんて寝れっかよ』
「なんかいろいろ間違ってる……」
『は?聞こえてんだよ』
「別に小声で言ってない」
『………』
「………?」
何。
急に黙って。
「何?」
『……電話から聞こえるおまえの声、懐かしいな、って』
「………っ」
『桜月?』
バカ。
バカ。
赤くなるとこじゃないし、今!!
『?』
「…………蓮」
『ん?』
今なら。
ちゃんと言えるかな。
「あ……」
「さーちゃん?お風呂あいたよー」
「!!」
"ありがとう"、そう、言葉にしようとしたところで。
ドアがノックされて。
美桜、が。
ドアを開けた。
咄嗟に。
ほんと条件反射。
手に持っていたスマホは通話を終了してた。
「真っ暗。寝てた?」
「あ、うん」
「夜眠れなくなっちゃうよ?」
「わかってんだけど、うたた寝しちゃってたみたい」
パチ、て。
美桜が部屋の電気をつけて。
一瞬明るさに目が眩む。
「………ねぇさーちゃん」
「ん?」
「あたし、蓮くんと結婚する」
「━━━━━え」
「変、かな。女からプロポーズしたら」
み、お。
タオルと着替え片手に美桜を見れば。
美桜の真剣な瞳が、揺れた。
伝わる。
美桜の想い。
ドキン ドキン
て。
美桜の心臓の音、聞こえる。