第3章 恋慕
『答えはもう、出てるみたいだね』
「…………」
真っ暗な部屋の中、ただただぼんやりと天井を見つめた。
どのくらいこうしてたのか。
ほんの数秒なのか。
正直全然、覚えてない。
もしかしたらそのままうたた寝しちゃってたのかも、しれないし。
沙耶ちゃんや結夏と別れてからの記憶が曖昧すぎて、むしろうたた寝しちゃってた、のがしっくりする。
とにかく。
夢と現実半々の世界にいたあたしを引き戻したのは枕の下で震えるあたしのスマホ。
たぶんちゃんと覚醒した状態ならあたし、着信の液晶、見てた。
誰かわかんないまま出るなんて、たぶんそんなことしてなかったと思う。
『………桜月』
違う。
完全にあたしを現実に引き戻したのは。
たぶん電話の向こうから聞こえてきた蓮の、声だ。
『…………?』
「………っ」
『なんか言えよ』
「…………」
『おまえ、なんともない?』
「え」
『目覚めたらおまえ、いないし。無事かどーか、確認したくて……』
「………っ」
8年、ぶりに聞いた。
電話から聞こえる蓮の声。
実際聞くよりも少しだけ低くて、病院だし、もう、夜だし、声のトーンを落とし気味の蓮の声は。
耳から直接、頭に話しかけられてるみたいで。
『桜月?』
声が、出ない。
『寝てんの?』
「………っ」
『なんでもいいから、声、聞かせて』
なん、で。
なんでこんなに………っ
胸が、痛い。
スマホ持つ手が、震える。
『もしかしておまえ、どっか怪我……』
「してない」
『え』
「怪我、してない」
急に変わった、切迫詰まった声色に。
思わずあわてて否定する。
「………してない、よ。どこも痛くない」
咄嗟に応えた反応を今さら後悔してももう、遅い。
あたしの声はきっと。
ちゃんと蓮に届いてる。
『それ聞いて、安心した』
「…………」
なんで。
そんな嬉しそうなの。
顔見てないのに。
なんで声だけでわかっちゃうくらい……、安心した声、出すの。
「………蓮、は」
『何、俺の心配してくれんのおまえ』
「っ!!……べ、つに心配なんてしてない。あたしのせいだし、後味悪いから……」