第3章 恋慕
あたしの、気持ち。
気持ち?
「ひ、てい………って、なにが……」
「気付かないフリは、もーいいから」
「さすが沙耶ちん、一刀両断。桜月も気付いてんでしょ?じゃなきゃそれこそ甲斐さんに失礼だよ?」
「…………」
そんな、の。
そんなのわかってる。
わかってる、けど。
「………よく、わかんないんだもん」
「だから」
「だから!!ほんとによく、わかんないんだってば!」
「………」
「気付いたらから何?なんかかわる?自分の気持ち正直になったら、なんか変わるの?今さらどーしようもないじゃん!余計惨めになるだけじゃん!!」
「………桜月」
寄りかかってた壁から肩を浮かせて。
ちょうど吹き荒れた風が、沙耶ちゃんの短い髪を揺らした。
押さえるように、髪を耳にかける彼女は。
すごく。
女の人、だった。
「桜月は、どーしたいの?」
「…………」
「答えはもう、出てるみたいだね」
そう言って微笑む表情も、すごくすごく。
キレイ。
こんな表情、あたしには出来ない。
これが、恋してる、ってことなら。
あたしには、こんな表情出来ない。
「………あたしには、無理」
「桜月」
沙耶ちゃんみたいに。
結夏みたいに。
あたしには、出来ない。
誰かを愛するとか。
愛されるとか。
……………出来ない。