第3章 恋慕
この涙は。
そんな浅はかで醜い自分に流した涙。
だから。
絶対に哀しみの涙なんかじゃない。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
口に出すことさえおこがましいけど。
ありがとう。
心から。
ごめんなさい。
『ごめん、送っていけないから………』
視線を外しながらそう言う橘さんの顔見て、泣きそうになる目頭に力を入れた。
だって、あたしに泣く権利、ない。
「桜月」
「え……」
家の前に見知った顔。
が、ふたつ。
「沙耶ちゃん、結夏」
結夏、も。
高校時代からの友人。
時々3人で集まって遊んだりもする、けと。
なんで。
今日?
「さっきね、甲斐くんから旦那に連絡あったの」
「え」
「桜月がなんか落ち込んでるみたいだから、って。だけど今は自分にはなんにも出来ないから、って」
「え………」
「沙耶ちんから少しだけ聞いちゃった。甲斐さんに、告られたって?桜月」
「結夏………、っ、でも……」
「うん、あたしらでもいいなら、話聞くよ?桜月溜め込みすぎなんだよいつも」
「そーだよ、なんでも話してよ桜月」
「………っ」
なんで?
なんで橘さん、そんなに優しいの?
あたし。
あんな酷いこと、したのに。
こんな風に優しくしてもらえる資格、ないのに………っ
「………勘違い、ねぇ」
「甲斐さんらしいっちゃー、らしい、よ、ねぇ」
「…………」
「てゆーか桜月ってけっこう魔性?やることえぐ」
「えっ」
「うん、それけっこう酷いよねぇ」
「………反論の余地もございません」
「まぁ、半分冗談だけど」
半分、ね。
「うーんでもさ?話聞いただけのあたしとか、甲斐くんとか。桜月の気持ちがどこにあるのか知ってるってのに、なんで当の本人はそれを否定するわけ?」