第3章 恋慕
ゆっくりと、優しく。
啄むような口づけは徐々に場所を移動して行き。
指先は、膨らみに優しく触れていく。
「…………っ」
思わず漏れそうになる声を、押し殺すように手の甲で塞げば。
やんわりと外されて。
見上げ見た先には橘さんの、笑顔。
両手を絡めるようにベッドへと押し付けて。
彼の唇が、胸へと触れた。
ビクン、て。
反応したあたしを気遣うように一度見てから、唇はその先端へと移動する。
「…………っぁ」
思わず漏れた声に羞恥していれば、やっぱり優しく、彼はあたしの頭を撫でてくれて。
そのまま。
彼の舌先が先端だけを優しく舐め上げて。
握りしめる掌に知らずに力が入る。
橘さんの、触れる手も、唇も。
全部がすごく、優しくて。
暖かくて。
愛しい………って、思った。
ほんとにそう、思ったんだよ。
「…………桜月ちゃん…」
「ち、が……っ」
橘さんが、好き。
これからもずっとずっと、一緒にいたいって。
本気で思った。
思ってる、のに。
「違う、から……」
なんで。
なんで涙なんか、今、出てくるの?
「………っ」
力なく、それでも笑ってくれる橘さんの表情がすごく辛そうに揺れて。
なんにも、言葉が出てこない。
「この前の、彼、かな……」
「……っ!!ち、が……」
駄目だ。
今何を言っても言い訳だ。
「たちば、なさ………」
上半身を起こしながら。
橘さんはあたしにバスローブを、掛けてくれた。
「桜月ちゃん、最近すごくキレイになったよね」
「…………………え」
特に誰に話すでもなく、独り言のように。
そう呟いて、彼はベッドの端へと腰をおろして。
ベッドを軋ませた。
その仕草は、すごく優雅で。
キレイなのはあたしじゃなくて橘さんだよ、といいかけた言葉を飲み込んだ。