第3章 恋慕
ザー
ザー
シャワーの音が、やけに耳に響く。
雨に濡れた身体を暖めるために入ったのは、駅の近くの、いわゆるそーゆーホテル。
おっきなベッドが真ん中で存在をありありと主張して、まわりにはテレビにテーブル、ソファーがある。
その、奥に。
十分すぎるくらいの広さの浴室。
「…………」
これで、いい。
これが一番いい。
心が折れた時、真っ先に浮かんだのは橘さんだった。
会いたい、って。
そう、思った。
『会いたい………っ』
無意識に。
行動してた。
だから。
これが一番いい。
後悔なんて、してない。
「!!」
ガチャリ、て。
ドアが開いて。
バスローブに身を包んで、湯上がりの橘さんが顔を出した。
ベッドの端へと座るあたしへと視線をうつすと、彼は嬉しそうににこりと、あたしに笑顔をくれる。
「暖まった?」
「……っ、はいっ、あたし、すみません、先にシャワー、頂いちゃって……っ」
「………緊張、してる?」
「…………っ」
緊張。
してる。
だってあたし。
これから………。
「安心して?何もしないよ」
「え」
覚悟を決めてぎゅ、て、ベッドシーツを無意識に握りしめるけど。
そんな橘さんの言葉で、顔をあげる。
「冷えた身体暖めるため、はほんと」
冷蔵庫からビールを取り出して。
「飲んでいいかな」って、無邪気に笑う彼へと視線を預けた。
「俺を頼ってくれて嬉しかった、のもほんと。でもそこにつけこむ気はないよ」
「…………」
「ちゃんと好きになって、桜月ちゃん。そしたら、今度は遠慮しないから」
なんで。
こんなに大人なんだろう。
あたしはなんで、こんなにも子供なんだろう。
「……………っき」
「桜月、ちゃん?」
そのまま、彼の背中へと抱き付いて。
「好き……っ、橘、さんが好き、です……っ」
想いを、告げた。
嘘なんかじゃない。
あたし、この人が好き。
橘さんが好き。