第3章 恋慕
沙耶ちゃんと4個歳上の彼氏、今の旦那さま、と、橘さんが同じ大学の友達だって知ったのは、バイトを辞めてすぐ。
世の中狭いなぁ、なんて、思ったこと覚えてる。
「甲斐くん!?彼と付き合ってるの?桜月!?」
「…………」
「桜月!」
両肩を揺する沙耶ちゃんから、目を反らす。
正面から沙耶ちゃん見る勇気、ない。
「…………っ」
とことん、最低だ。
あたし。
「………告白、された」
「え」
「この前偶然、会って。何度か食事、して、それで……」
「桜月」
「だから、返事……、しようって」
「………好き、って、こと?」
「わかんない……」
「桜月」
「だってわかんないんだもん!!好きってどんなだったか、わかんない。ずっとずっとそーゆーの、なかったし。わかんない……」
一緒にいて楽しいとか。
ドキドキするとか。
それじゃ駄目?
好きのバロメーター、なに?
「ため息の原因、これ?」
「………っ」
「いいと思うよ、あたしは」
「え?」
「甲斐くん、桜月のこと絶対大事にしてくれる」
「沙耶ちゃん……」
「わかんないなら、付き合ってみて好きになってもいいんじゃない?」
「………」
「甲斐くんなら、大丈夫だよ」
「………」
「桜月のこと、ちゃんと受け止めてくれる」
「沙耶ちゃん……」
「良かったね、桜月」
「………うん」
大丈夫。
沙耶ちゃんに言われると、なんだか安心する。
間違ってない?
あたし、間違えてない?
「今度いつ会うの?」
「………来月の、連休、出掛けようって」
「嘘、泊まり?」
「と……っまり、って。違う違う、日帰り!」
「あ、そう、つまんない」
「沙耶ちゃん」
「まぁ、なんにせよ、頑張んな」
「うん」
「ちょっと実家電話してくるから、先行くね」
「うん。━━━沙耶ちゃん」
「ん?」
「ありがと。ちょっと、モヤモヤ晴れた」
「そ?それは良かった」
「うん」
良かった。
モヤモヤしてるの、すっきりした気がする。
沙耶ちゃんがいなくなった屋上のフェンスにひとり寄りかかった。
ガシャン、て。
フェンスから音が、して。
目を閉じる。
「勝手にひとりで解決してんなよ」