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桜月夜の、鎖

第1章 最悪の再会


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『なんで、あたしなの?』
『は?』
『なんで、あたしなんかと付き合ってんかなぁ、って。』
『ならなんでお前、俺なんかと付き合ってんの』
『え』
『な?言われても困んだろ。わけわかんねーことグダグダ考えんじゃねぇよ』
『………』

ぐしゃってされた、前髪が熱くて。
優しくて。
いつまでも好きだって、思った。
彼の声も。
ぬくもりも。
掌も。
すべてが、愛おしくて。
一生続くって、思った。
思いたかった。


だけど。




それは一瞬で、崩れたんだ。
跡形もなく。
痕跡すら残さずに。



『桜月、なんなのお前』
『………』
『もう俺とは、話すんのも嫌なわけ』



絡み取られる。
視線に。
鋭くあたしを見る、彼の視線に。
声に。
身動きが、出来なくなる。



『………っ、離して!!』



だから、逃げた。
逃げ出した。
逃げ遅れる、前に。
まだ動けるうちに。



彼の前から逃げ出したんだ。





━━━━━━━━━――――………。




ピ ピ ピ ピ



朝の陽と、目覚まし時計の音。
そうか。
昨日、止め忘れたんだ。
まだまだ寝ぼけ眼のままに、体をゆっくりと起こせば。
瞳から一筋、暖かいものが流れた。

「れん……」

頬へと手を伸ばしながら。
すでに忘れたはずの、彼の名前。
知らずに溢れた、彼の、名前。




「蓮………っ」




掴まれた右腕が、やけにリアルに熱を持つ。
手を離したのは自分なのに。
自分から、逃げ出したのに。



どうして今もこんなに住み続けるの。
熱くするの。



触れた右腕の熱を打ち消すように、自分自身を抱き締めて。
ただひたすらに。
シーツを濡らした。
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