第2章 葛藤
『また逃げんだ?』
逃げる以外に、どーすればいいの?
美桜と付き合ってるくせに。
結婚まで、美桜は考えてるよ?
あたしはそれを壊す権利なんてない。
美桜がどんなに蓮を好きか痛いくらい伝わって来るのに。
どーすればいいの?
教えてよ。
何が正解なの。
どーすればいいの。
あんたを避ける以外に。
関わらないようにする以外に。
どーすればいいの?
蓮から返された眼鏡をぎゅ、て握りしめた。
「………考え事?」
「え」
あ………。
上から降ってきた言葉に顔を上げて。
心配そうにあたしを覗き込む橘さんと、目があった。
「ごめんね、疲れてるのに無理に誘っちゃったかな」
「違う!!」
「え」
「あ……」
申し訳なさそうに項垂れる橘さんに、思わず大きな声、出してて。
自分の声に自分でびっくり。
「あ、の……。疲れてるとか、じゃないです。橘さんと、こーやってご飯食べるの、楽しいし。だから、あの……」
モヤモヤしてる気持ち。
いつも橘さんは消してくれる。
今日だって。
連絡来たときはすごく嬉しかった。
いつの間にか。
橘さんと会うの、楽しみになってた。
なのに。
なんで蓮のことなんか考えちゃってんだろう。
最悪。
最悪だ、ほんと。
「だからあの、ごめんなさい。あたし、慣れてなくて、こう、男の人とご飯とか……」
「うん」
「え」
「もういいよ」
「橘、さん?」
「ごめん、俺もちょっと緊張しちゃって。退屈させたよね」
「そんな、退屈なんて………っ」
「桜月ちゃん」
「?」
「出ようか。ちょっと、話さない?」
「………は、い」
歩こうか、って橘さんの提案で。
夜の町をブラブラと、して。
特になんの変哲もない話をして。
あっとゆーまにたどり着いた駅の構内。
いつもと変わらない日常。
駅まで送ってもらって、さよなら。
の、はずだった。
だけど。
「好きなんだ。桜月ちゃんのこと」