第2章 葛藤
「………じゃあ、帰るね」
「桜月」
「………っ」
背中を向けてドアへと足を向けようと、して。
低く呼び止められた声に息が、詰まる。
「………身体中、痛くて。……動けねんだけど」
「………」
「風呂とか」
「━━━━━━っ」
背中を向けたまま、目を閉じた。
短く、息を吐き捨てて。
「手伝って」
ずしりと肩へとかかる、男の人ひとりぶんの重さ。
「………っ」
抱きしめられた腕の中。
こんなの。
振りほどけない。
「………ずるいよ、蓮」
「………」
「その言い方、ずるい」
「知ってる」
「…………っ」
後ろからまわされた掌が、頬に触れて。
誘導するように反らされた顔。
唇に、蓮の唇が重なった。
「━━━━━━━蓮……っ」
ザァアア
って。
勢い良く流れ落ちるシャワーの下。
湯気の中。
蓮と抱き合って、キスをした。
壁に背中をつける蓮の首に両手をまわして、どちらからともなく深く舌を絡ませて。
呼吸する暇も惜しむくらいに、夢中で貪りあった。
蓮の指先が秘部を責め立て、追い込めば。
背中を反らして快感を感じた。
吐き出す吐息の甘さに酔いしれた。
甘いキスに溺れた。
ただの男と女になって。
抱き合って。
肌を合わせて。
お互いの欲望を吐き出した。
そんなささやかな、幸せの瞬間、だった。