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桜月夜の、鎖

第2章 葛藤


蓮の瞳が真上で揺れる。



「酒と痛みで、マジ何するかわかんねぇから」
「………」
「加減できねぇ、……って」


唇の端、切れてる。
だからさっき血の味、したんだ。


「………っんで、逃げねんだよ」






わかんない。
なんであたし、逃げないの?
帰らないの?
ほっとけばいい。
嫌いだもん。
酷いことされた。
だってあんなの、あんなの許されることじゃない。
嫌い。
嫌い。
蓮なんて、嫌い。
嫌い、だけど。





「………わかんない、よ。あたしだって」




ほっとけない。
蓮をほっとけないんだもん。




「俺に何されたか忘れたの」
「酷いことした自覚はあるんだ」
「………」




怖かった。
初めて蓮が、怖かった。
だけど。
今目の前にいる蓮は、怖くない。
不思議とそう思える。
あたしの知ってる蓮だって、そう思えるの。





「   」



蓮が、口を開きかけた時に携帯が、なって。
ふと無意識に見た携帯。
蓮の顔を見た、瞬間。
わかっちゃった。
美桜からだ………、って。


「いいよ、出て」


跨ぐ蓮を押し退けて起き上がり。

「やっぱりあたし、帰るから」


ベッドから立ち上がった。



だけど。



「帰んなよ」


右手のひらが、捕まって。
携帯の着信音が、響く。



「さっきは帰れって言った」


背中を向けたままそう言葉にするだけで、精一杯。
振り向けない。
蓮の顔、見れない。


「………おまえは?」
「………」
「本心か?」



携帯の音が、止んで。
やけに沈黙が重く響く。



「桜月」
「本心だよ」
「ならこっち見て言えよ」
「………」
「さつ……」


「蓮」


振り向いて。
蓮と視線を合わせた。


「あたし、好きな人出来た」
「は?」
「蓮のことも、ごめん。つい最近まで忘れてたし。美桜が連れてきた時はほんとびっくりして……、だから」

笑顔でそう、言えば。

「わかった」

短くそう一言。
蓮はあたしの右手を離した。
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