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桜月夜の、鎖

第2章 葛藤






━━━━━━━ぇ。





橘さんの運転する車の、助手席。
飛び込んできたのは見知った顔。




「橘さん、止めてくださいっ」



思わずそう、叫んでた。


「桜月ちゃん?」
「ごめんなさいっ、ここで大丈夫です。また、連絡します」


助手席を開けてペコリと頭を下げて。
道路挟んで向こう側へと、走った。




見間違い?


見間違いなら、それでいい。
それでいい、けど。
見間違いなんかじゃなかったら。
人違いなんかじゃ、なかったら。
逸る気持ちを抑えて足を動かす。


と。



「………っ」



やっぱり。



「れ、ん………」





さっき見えた。
男の人が男ふたりに殴られてるとこ。
蓮、かと思った。



「蓮!!」



怠そうに座り込みながら伏せられていた瞳がゆっくりと開かれて。
すぐにまた伏せられた。


「こんなとこで何してんの、……ああ、デート」
「蓮、待って怪我……」


そのまま片腕を壁伝いに立ち上がって、行こうとする蓮の右側へと回り込み肩を貸す。


「帰れ」
「蓮、飲んでるの?」
「関係ねぇ」
「ケンカ、してるの?」
「バカじゃねーの」
「蓮」


「………ガキじゃねんだよ、しねーからもう」


ケンカ。
高校の頃は蓮、良くケンカ、してて。










蓮と初めて会った時も、ケンカ、してた。




『………きゃ…っ』

たくさんある中の桜のひとつ。
体育館脇の桜の木の下。
昼休み、あたしの特等席。
ランチタイムが終わったら、読書の時間になったりもする。
だけどこの日はいきなり人が、ふってきて。
目の前でドサッと鈍い音がしたと思った瞬間、心臓を抉るような酷い悲鳴。
おそるおそる目を開けて見れば。
無言で。
無表情で。
思いっきり目の前に倒れ込んだ男の人の脚を踏みつけているところで。
ミシミシと嫌な音を立てて、いた。


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