第2章 葛藤
「おかえりさーちゃん」
玄関からまっすぐ部屋へ行こうとリビングを通れば。
案の定掛けられた声にドキン、て、心臓が跳ねた。
『美桜とは、別れるから』
「あ、た、ただいま、美桜」
「さーちゃんも今帰り?」
「……うん、ちょっとね」
「美桜もね、蓮くんとデートだったのー」
「そう、なんだ」
「ねぇねぇさーちゃん、そろそろママたちに会わせてもいいと思う?」
「え」
「蓮くん、会ってくれると思う?」
………まだ、美桜に言ったわけじゃ、なかったんだ。
「………どうかな。よく、わかんないし」
「そっかー、そうだよね。あ!!そーいえば聞いたよー、蓮くんから!!」
「え」
ドキン、て。
心臓が嫌な音を立てて軋む。
「蓮くん、さーちゃんの学校に異動なったんだってね!」
「え」
「名簿に乗ってる名前だとあたしと名字違うからわかんなかったみたい。今日会ったんでしょ?学校で蓮くんと」
「あ、…うん、会った、かも」
「さーちゃんいい加減神楽捨てないと、今のお父さんにも失礼だよ?蓮くんびっくりしてた。さーちゃんと会った、って」
「そうだね、うん、考えとく」
「蓮くんの白衣姿、カッコいいでしょ?あたしもそこに一目惚れしちゃったんだー。蓮くんね、うちの会社でも……」
「美桜」
「あ、なに?さーちゃん」
「疲れたから、休んでいいかな?」
「うん……。ごめんね、そーだよね。おやすみさーちゃん」
「おやすみ美桜」
ごめん。
ごめん美桜。
罪悪感が、消えないよ。
そんな言葉で許されるとは思ってないけど。
ごめんなさい。
一生許さなくていいから。
だから………。