第2章 葛藤
逃げようとしても逃れる術なんてなくて。
力任せに重なった唇。
深くなる口づけの勢いに、足は勝手に後退してく。
背中が壁にくっついたところで。
漸く唇は離れ。
代わりに蓮の右手が、壁へと叩き付けられた。
「絶対認めない」
「………っ、に」
「そんなの絶対認めねぇから」
「何言ってんの!?」
「嫌なんだよ!!」
「………え」
「誰のものにも、なるなよ」
「……に、それ」
「頼むから……っ、せめて誰のものにも、なんなよ」
肩へと預けられた頭が、震えてる。
れ、ん?
何、言ってんの。
あたしに何、したか、わかってんの?
だいたい。
「美桜、は?」
「………」
「美桜がいるじゃない。それなのに!!なんで言えんの!?意味わかんないよ……っ」
「………別れる」
「ぇ」
「美桜とは、別れる」
何、今、なに、言って……?
「美桜じゃなかったんだ。美桜じゃなくてずっと、俺は……っ」
「止めて!!」
顔を上げた蓮と視線が絡む。
揺れた漆黒の瞳に、吸い込まれそうに、なる。
でも。
だけど。
「やめてよ、お願いだから……」
聞きたくない。
聞きたくない。
「桜月」
「気安く呼ばないで」
駄目。
これ以上は、駄目。
ス、と。
蓮の腕から抜け出して。
玄関へと、走った。
あのままあの場にいたら。
…………いたら?
あのままいたら、なんだってゆーの。
何も変わらない。
終わったんだ。
あたしたちはもう、8年前のあの日に終わったの。
もう。
関係ない。
ふぅ、とため息ひとつ。
玄関のドアを開けた。