第2章 葛藤
「橘さんの彼女さんは、ラッキーだね」
「ん?」
「こんなに優しくて、大人で。すごく楽しそう」
「………」
こんなに心地いい空間、彼女でもなんでもないあたしにさえ作ってくれるんだもん。
彼女だったらきっと、もっと楽しいだろーな。
「あたし、なんかほんと最低で。大事な人裏切って、でも全然平気なふり、してて。なんかもう最近頭の中ぐちゃぐちゃで。橘さんと話してるとほんと楽しくて」
美味しいご飯、食べて。
楽しくおしゃべりして。
ほんと楽しくて。
橘さんがキレイすぎて自分が嫌になる。
今日だってあたし、ひとりでいたくなくて、それで。
「………やっぱりお酒、飲んじゃおーかな」
「桜月ちゃん」
「付き合ってもらえますか?橘さん。送ってくれなくていいから。一緒に飲もう?」
「そろそろ帰らないと、心配するんじゃない?桜月ちゃん、実家でしょ?」
「………帰りたく、ないなぁ」
帰ったら、美桜がいる。
美桜と顔合わせらんない。
2度も美桜、裏切った。
だけど。
美桜がいないならいない、で。
ひとりでいたくなくない。
矛盾する気持ちにモヤモヤする。
「………それってさ、俺、誘われちゃってるのかな」
「え」
さ、そわれ……っ
「!!」
あ、たし!!
何言ってんだろう。
「ち、が……っ、いやそーじゃなくて!!えっと、あのごめんなさいっ!!帰ります!帰ります今!直ちに!」
バカっ!!
バカバカバカっ!!
何口走ってんの、あたし。
やだ。
恥ずかしすぎて今すぐ死ねる。
「冗談だよ。桜月ちゃん、必死すぎ」
あはは、なんて笑いながら。
橘さんがあたしの右手に、触れて。
「誘われちゃってた方が、俺としてはラッキーだったんだけど」
「え、ええっ!?」
「驚くとこ、ちがくない?酷いな」
「ご、ごめんなさいっ!!だって……っ」
ああ〰️っ、もう。
ぐちゃぐちゃしすぎて頭パンクしそう。
目が回る。
「送るよ」
「…………すみません」