第2章 葛藤
「………っ」
さらっと。
なんかすごいこと言わなかった、今。
「いちゃこくなら余所でやってくんねーかな。ひとりもんにはうざったくてしょーがねぇ」
「へへーん、マスターうらやましいんだろ」
「俺だって若い頃はなぁ」
「何回も聞いたよそれ」
「甲斐、お前俺の淡い青春を何もそんな無下にしなくてよかねーか?」
「あー、ごめんねマスター。……桜月ちゃん、おいでよ。」
カウンターの隣を、ポンポン、て。
橘さんが促して。
「おじゃま、します」、って。
あたしも隣に座る。
「橘さん、マスターと仲いいですね」
「しょっちゅう食べさせてもらってるからね」
「わかる。あたしも近かったら通っちゃうもん!マスターの料理美味しいから」
「あ、桜月ちゃんうれしいこと言ってくれんじゃん」
「ちょっとマスター、邪魔すんなって」
「へいへい、すみませんね」
「桜月ちゃん、眼鏡止めたんだ?」
「え」
あ。
そっか。
今日学校で。
予備の眼鏡、壊れちゃったんだった。
「あ、コンタクトに……」
「似合う。かわいいよ」
「………っ」
目をみてそんなこと………っ。
言葉、詰まる。
「桜月ちゃん、お酒飲んでく?ここね、夜はお酒始めたんだよ」
「ぇ、でも明日も仕事……」
「大丈夫。遅くなんないうちに送るから」
「でもそれじゃ橘さん、飲めない……」
「いーの俺は」
「でも……」
「あ、お酒嫌い?」
「あんまり得意じゃ、なくて……」
「そっかそれじゃやめとこーか」
「………ごめんなさい。つまんないですね、あたしほんと」
「桜月ちゃん」
「ふぇっ!?」
パチン、て。
おでこが弾かれて。
思わず両手でおでこに触れる。
「そーゆーのもう止めよ」
「え」
「桜月ちゃん、俺といてつまんない?」
「そんな……っ、そんなこと全然っ」
「ね?嫌でしょ?言われるの」
「………」
なんかもう。
経験値が、違いすぎる。
あたしの知ってる8年前よりもっとずっと、大人。
あたしはあの時からどのくらい成長、出来たんだろう。