第2章 葛藤
「………だたいま」
ガチャン、てドアを開けて家へと入れば。
いつも以上の静けさで。
静かすぎる沈黙が耳鳴りとなってこだまする。
「そっか今日、美桜遅くなるって」
ママとお父さん、外で食べてくるって言ってたっけ。
「………〰️っ、ぅ」
最悪。
美桜に合わせる顔、ない、とか思ってたくせに。
誰もいない場所には帰りたくない、とか。
自分勝手すぎて笑える。
ブー ブー ブー
鞄の中の携帯が鳴って。
液晶には橘さんの、名前。
「………」
なんで。
こんな時に電話、くれちゃうのかな。
「………はい」
『桜月ちゃん?ごめんね急に。今平気だった?』
「はい」
『……?声、暗いけど大丈夫?』
「…………っ」
『桜月ちゃん?』
「なんでも、ないです。橘さん、なんか用事ですか?」
『うん、いや用ってほどじゃないんだけど』
電話の向こうから、車のエンジン音。
橘さん、今外なんだ。
「………橘さん」
『ん?』
ごめんなさい。
あたし。
今ひとりで、いたくない。
「………ご飯、て、まだですか?」
「桜月ちゃん」
カランカラン、て。
扉を開ければ。
カウンターから橘さんが笑顔で手を振ってくれた。
「すみませんっ、急にこんな……」
『ご飯、まだですか?』
『え』
我ながらいきなりすぎたとは思う。
30分、てゆー距離は。
頭を冷静にさせてくれるには十分すぎるほど十分で。
冷静を取り戻した頭はすでに羞恥心でいっぱいだ。
「なんで?誘ってくれて俺は嬉しかったよ?もともとそのつもりで電話したんだし」
「ほんと、すみませんっ」
あたしが責任感じないように気まで使わせちゃうし。
ああなんかもう。
いろいろ最低だ、あたし。
「桜月ちゃんの悪いとこだよ、それ」
「え」
「気、使いすぎ。俺が桜月ちゃんに会いたかったんだから、それでもーいいじゃん」