第2章 葛藤
「…………っ」
ほんと最悪なこの状況。
あたし、なんかしたっけ。
けっこう真面目に生きてきたはずなんだけど。
そりゃ、知らない間に反感や恨みも買ったりしてたかもしれないけど。
美桜にした裏切りだって、もちろん許されることなんかじゃないってわかってるけど。
だからこうして。
会わないように。
関わらないように日々穏やかに過ごしてたんじゃない。
なのに。
なのに。
こんなのあんまりだ。
「残念。ゲームオーバー」
空き教室の、一室。
壁へと追いやられ、逃げ道を塞ぐように片腕を壁へと付きながら。
目の前の男が、目を細めて笑った。
━━━━━━---……。
新学期。
まぁ学生でもない限り長期休みなんで盆と正月くらいで。
特に代わり映えもしないんだけど。
でもやっぱり新学期は新しい年度の始まり。
緊張感は、存在するのだ。
今まであった失敗も失態も忘れて。
新しいスタートに胸がわくわくする、そんな季節。
の、はずだった。
校長先生の紹介で、壇上に上がった白衣姿のあいつを、見るまでは。
「なんで逃げんの」
「に、逃げてなんか……。別に保健室なんて用事でもなきゃ普通、行かないし」
「ふぅん……?」
「な、何……っ」
「別に。……警戒しすぎ」
「け、警戒って……っ、普通こんな場所追いやられて追い詰められたら誰だって怖いわよ!」
「なんで?」
…………っ。
あんた、あたしに何したか忘れたの!?
「………別に、なんにもするつもりなかったんだけど。てか普通に、避けられてんのムカついただけだったし」
「!?何……っ」
ただでさえ近すぎる距離をさらに縮めて。
蓮の両腕が、壁にくっつく。
正面から向き合う気にもなれなくて、囲われた腕の中、横向きにわざと反らしていた視線。
それはあっさりと。
目の前に出来た影を頭が認識するまえに絡み取られ。
唇さえも、蓮は一緒に奪って行った。
「!??」
「そんな意識されっと、応えてやんなきゃじゃん?」
固まるあたしにお構いなしに、すぐに離れていった唇はすぐにまた、近付いてきて。
さすがに我に返った思考回路は、すぐさま行動を起こす。
目の前に迫る蓮の顔ごと、両手で押し退けた。