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桜月夜の、鎖

第2章 葛藤





「…………」




橘さん、謝ることも出来なかった。
連絡先すら交換してないし。



駅までの道のり、ぼんやりとそんなことを考えていれば。
昔バイトしてたカフェの明かりが目に止まる。
駅から近いから、そーいえばここにしたんだっけ。
マスターなら、橘さんとまだ繋がってるぽいし。


………行ってみようか。



あのままこれきりなのはさすがにちょっと、後味悪すぎる。







「………いらっしゃ…、桜月ちゃん、久しぶり。いらっしゃい」



良く知る雰囲気そのままのカフェのドアを開ければ。
あたしに気付いたマスターが笑顔で挨拶してくれた。



「お久しぶりです」



あたしも、笑顔で会釈。
そして。
カウンターに座っていた男の人が、こちらを振り向いた。


「あ……」



「桜月ちゃん」


橘、さん。



来てた、んだ。
マスターにきっかけ頼むために来たわけだけど。
いざ本人目の前にしたら気まずさマックス。
なんて言えばいいか、わかんない。



「どーしたの?こっちおいでよ。ご飯は?食べた?」
「あ、いえ」
「食べてきなよ。ね、マスターなんか出してあげて」



相変わらずの優しさと笑顔で、橘さんは何でもないように、あたしに接してくれる。
そうだ。
この人、こーゆー人なんだ。


「………お邪魔、します」
「はは、どうぞ」
「今ね、ちょうど桜月ちゃんの話してたんだよ。甲斐のやつ愚痴愚痴うるさくて」
「マスター!!余計なこと言ってんなよ!」
「はいはい」


「あ、あの橘、さん、ごめんなさい、今日。その、大丈夫でした?」
「ああ、あれ?うん、桜月ちゃんのせいじゃないし」
「でも………」


「……」


一瞬、こっちを向いた橘さんの表情が止まって。
だけど気のせいかと思えるくらいに、またいつもみたいに笑顔になった。

「?」


「………彼と今まで一緒だったの?」
「え?………あ!!違う!!違います!一緒になんて……。ちょっとブラブラしてて、それで」
「……そっか」


嘘、ついちゃった。
なんでか、わかんないけど。
咄嗟に嘘ついちゃった。
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